お薦め本

真藤順丈『夜の淵をひと廻り』

あわわ、えらいものを読んでしまった。手に取った理由はほんとあってなきがごとしで、「杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー1位 真藤順丈『夜の淵をひと廻り』(KADOKAWA)」の、 主人公シド巡査が勤務地である東京郊外の町・山王子に…

エラリー・クイーン 越前敏弥訳『レーン最後の事件』

レーン最後の事件 (角川文庫)エラリー・クイーン 越前 敏弥 角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-09-23売り上げランキング : 234897Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:4042507182 うっわー、面白かった。 本書は『Xの悲劇(Amazon)』から始まるレ…

小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』

本にだって雄と雌があります(新潮文庫)小田 雅久仁 新潮社 2015-09-01売り上げランキング : 85283Amazonで詳しく見る by G-Tools いつ頃のことか記憶にないのだが、本屋に行ったときにやたら眼を惹く表紙の本を見かけた。こんな表紙である。 その場で表紙…

とよ田みのる『FLIP-FLAP』

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)とよ田みのる 2015-03-16売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:B00UTYXQD0 作者の名前で購入した。『ラブロマ(感想)』は、やさぐれ日記暫定版を知るきっかけになった作品で、結構思い出深かったのである。今月…

李信恵『#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル』

#鶴橋安寧―アンチ・ヘイト・クロニクル李 信恵 金 明和 影書房 2015-01-16売り上げランキング : 10824Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:4877144536 ツイッターで何度も見かけ、読んでみた。 明け方までかかって一気に読了した。 じつは長々しい感想を書き…

戯作・誕生殺人事件

『仮題・中学殺人事件(感想)』に始まるスーパーとポテトのシリーズ、まさかの完結編。 「まさかの」と書いたのは『本格・結婚殺人事件』(読めてない……)でシリーズが終わるものと思っていたから。著者ホームページでもう一本やるというコメント見たときは…

宮内悠介「星間野球」

雑誌『小説野生時代』最新号の別冊付録『野生時代読切文庫』所収作品。 著者は昨年デビュー作の連作短編集『盤上の夜(amazon)』がいきなり直木賞候補になった人*1。この本は囲碁やらチェッカーやら麻雀やらチャトランガやら将棋やらといった盤上遊戯…

Jedediah Berry 『The Manual of Detection』

今年のハメット賞受賞作。海外ミステリ通信で紹介されていたあらすじが面白そうだったので読んだ。作者のファーストネームが、俺にはさっぱり読めなかったのだけど、同じスペルの人が「ジェデッドアイア」と表記されていたのを見つけたので、そう読むのが正…

平山譲『魂の箱』

読書メーター見ても、文庫本は俺しか読了登録してないので、こっちでも感想をあげてみる。こういう本は読まれるべきだ。すくなくともボクシングファンくらいには。 本書は、元世界ジュニア・フェザー級チャンピオン畑中清詞、それから引退後彼が立ち上げた畑…

山岸俊男『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』

あっちこっちで取りあげられていた本。「日本人よりアメリカ人の方が他人を信頼する」「日本人はアメリカ人より個人主義」って部分の紹介をよく見た気がしたのだが、ブクマし忘れたせいで記事に辿り着けなかった。 本書は1999年に発行されたもの。内容紹介は…

ななころびやおき『ブエノス・ディアス・ニッポン』

数ヶ月前、国籍法の話について調べているときに、この記事を見つけた。 ・○○○!知恵袋 国籍法は改悪なんでしょうか?←ブログは現在はてなに移行、非公開で運用中。 俺は国籍法の話(例の外国人が押し寄せて、日本が乗っ取られるって奴)を聞いたとき、いくら…

まこと学ぶ英語の本制作委員会『まこと学ぶ英語の本』

まこという名の不思議顔の猫関連本。今回はまこたちと一緒に英語を勉強してみましょうという主旨。リンク先ではアフィリエイトの収益をボランティアに寄付することをうたっているので、どうせ買うならと飼い主のサイトから購入。「肉球」を英語でなんと言う…

O・ヘンリー芹澤恵訳『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編』

1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編 (光文社古典新訳文庫)芹澤 恵 光文社 2007-10-11売り上げランキング : 70741おすすめ平均 Amazonで詳しく見るasin:4334751415 by G-Tools 以前「短編小説のアメリカ 52講(amazon)」という本を読んだことがある。長篇が主流…

トーキョー・プリズン

「ねえ、きみ」穴が言った。「民主主義というやつはなにも、それをつくる人たち以上によいものではないのだよ」 いやあ面白かった。柳広司が終戦直後の日本は巣鴨プリズンを舞台に描く密室もの。 語り手は行方不明になっている友人の手がかりを求めて来日し…

W.リップマン 掛川トミ子 訳 世論(上)

1922年刊。amazonのレビューで、「おそらく原文を読んでいるアメリカ人読者よりも、日本語の訳文を読んでいる日本人読者の方がはるかによく理解しているのではないかと思います。」と書かれているのを見て、読んでみようと思った。社会分析の本。著者はは「…

梨木香歩 西の魔女が死んだ

先日映画化されたので、それを機に買っておいた本。主人公のまいは中学に進んで間もなく学校に行かなくなっている。母親はそんなまいをもてあまして実家に預けることにする。そこでまいは祖母(イギリス人)と過ごす一夏が物語の主な舞台となる。タイトルに…

梓崎優 砂漠を走る船の道 市井豊 聴き屋の芸術学部祭

第五回ミステリーズ!新人賞受賞作品。この賞、今回から審査員に辻真先が加わるということで、いったいどんな作品を辻先生は選ぶんじゃろ? という興味で初めて雑誌「ミステリーズ!」を買った。 全会一致、文句なしの受賞作が出た。 梓崎優「砂漠を走る船の…

Gilbert Keith Chesterton The Napoleon of Notting Hill

友人が滅茶苦茶面白いというので読んでみた。1904年に書かれた1984年を舞台にした小説。っつーことは「我が輩は猫である」と同い年なのか? 19世紀終わりから20世紀初頭は未来予測がはやっていたみたいだが、チェスタトンはそれに唾を吐きかけるよう…

奥泉光 モーダルな事象

大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く……。ミ…

田中優子『江戸の想像力―18世紀のメディアと表徴』

江戸の想像力―18世紀のメディアと表徴田中 優子 筑摩書房 1992-06売り上げランキング : 194208Amazonで詳しく見る by G-Tools 「江戸の想像力―18世紀のメディアと表徴 (ちくま学芸文庫)」(田中優子)読了。接続の仕方が面白くて引き込まれた。江戸中期から…

渡辺実『平安朝文章史』

だいぶ前に読了。著者は京大名誉教授。この本は半ば以上、著者の見た夢想によって成り立っている。別に悪い意味ではない。というか、非常に面白かった。こんな風に始まる。 日本語が漢字に出会ったことの意味は大きかった。それは、今まで書き留めることので…