月の兎

俳諧博物誌』(amazon)を読んでいたら、「兎」の項目で、「月の兎」というモチーフに触れ、いくつか月に住んでる兎を取りあげた句を紹介したあと、貞門時代の句では「不思議なことにこの兎たちは、月の兎と称するだけで臼も杵も持っていない」と言い、さらにいくつか句を紹介したあと、こう続ける。

月の中の兎が臼に搗(つ)くものは、昔は薬であったらしく、李白なども「白兎擣薬成。問言与誰餐(はくとくすりをついてなる。とうていうたれにあたえてさんせしむるか)」といっている。それが兎の餅搗(もちつき)と相場がきまったのは、そう古い事ではないという話である。

 そうだったのか……。なんでも『鶉衣』ウィキペディア)にも「君みずや、久かたの月の中にも、薬を搗くときけば」云々と出ているそうで、著者の横井也有は1702年の生まれだそうだから18世紀の半ばはまだ薬だった模様。

 じゃあどっから餅をついていることになったわけ? ってのは、この本じゃ追跡してくれてないのだけど、「望月という言葉の縁から、餅搗になってしまったのかも知れない」と書いてあった。結構驚いた。なんかかぐや姫の昔から月の兎は餅をついていたものとばかり思ってたからさあ。

 それで思い出した、ウサギでビックリしたエントリ。
gkmond.hatenadiary.jp
読んだものは基本端から忘れていくんだけど、これは「え、仲間に戻してもらうためだったらそんな命懸けのミッションを自分から持ちかけるの?」ってなんかゾッとしたんで今でもときどき思い出してゾッとしているが、なんでラストを知りたかったのは忘れてしまった。


新編俳諧博物誌 (岩波文庫)