冨田恭彦『哲学の最前線 ハーバードより愛を込めて』

哲学の最前線―ハーバードより愛をこめて (講談社現代新書)
冨田 恭彦

4061494066
講談社 1998-06
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by G-ToolsISBN:4061494066
哲学の最前線 ハーバードより愛を込めて」(冨田恭彦著)を読んだ。1998年刊行。

メタローグ
フランス現代思想の盛り上がりが落ち着き、次を担うと期待される<英米哲学>の、待望されていた超初心者向け入門書がこれ。"根本的翻訳"や"理論負荷性""指示理論""指示の因果説"といった本来極めて難解な概念がスラスラ頭に入ってしまうのは、「ガヴァガイ」や「アヒル・ウサギ図」といった親しみやすい例え話(きちんとした原典あり)を多用した対話形式の採用と、何より著者の文章力のたまものだろう。基本図書や関連書籍もきちんと取り上げられていて便利だが、本書で<英米哲学>は簡単と錯覚して他の本を読むと、その小難しさに投げ出す人が増えそうな、ちょっと罪作りな本。(守屋淳
『ことし読む本いち押しガイド1999』 Copyright© メタローグ. All rights reserved.

 ハーヴァード大学に客員研究員として滞在中の研究者を主人公に、彼が回りの人たちと論議するさまを小説風に書いているのだけれども、ぶっちゃけとってつけたような風景描写はいらない。対話形式になっていることで読みやすさはあがっているとは思うけど。
 先入見なしにものごとを理解することはできない、信念(手持ちの情報)と関わりなく、言葉と実在するものとの間の結びつきを確保することはできない、この世界には絶対的真理など存在しない、といった話を簡単にかつ明快に説明していく。この手の本としては、信じられないほど読みやすい。紹介されているガダマーだのクワインだのローティだのの本を読んだところでわかるはずもないので、次は同じ著者の書いた「科学哲学者柏木達彦」シリーズというのを読んでみようと思った。