『小説!? Dr.スランプ』

小説DRスランプ (集英社文庫 コバルトシリーズ―コバルトシリーズ 66B)
辻 真先 鳥山 明

4086104326
集英社 1981-07
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by G-ToolsISBN:4086104326

「小説!? Dr.スランプ」(原案:鳥山明)を読んだ。図書館に置かれていたのだけど、1981年の出版から10年で31刷まで言ってるよ。今まで見た辻作品の中で最多増刷だ。……悲しい。
 言うまでもなく本書はマンガ「Dr.スランプ」のノベライズ。対象読者は当然原作、もしくはアニメを見てる人。なもんだから、冒頭アラレちゃんが生まれる前から書き出される事への言い訳から話が始まる。この言い訳している筆者辻真先が作品から消えることがないのが特徴。そういう意味で本作は元の作品を故意に忘れたふりをする普通のノベライズとはまったく逆方向を向いている。何故こんなことがなされたのかと考えるに、おそらくそうしなければ、「小説版を作る意味がない」と作者が思ったからだろう。出版社は、こんな自己主張の強いノベライズが欲しいとは思わなかったんじゃなかろうか。なのでまるっきり職人仕事ではないような気がした。
 内容は短編集の形でタイムスリッパー、ニコチャン大王、おとぎマシーンのエピソードが採られている。チタマという呼び方は懐かしかったものの、マンガの破壊力にはやっぱ届いていないよな。
 へえと思ったネタ。

「ああ、あれはギュウドン。でも、母親じゃないよ。父親だよ」
「どうしてそんなことがわかる」
「だって牛丼トウサンだもの」

 この箇所に注が付されていて吉野家が倒産したことに基づくギャグであることが解説されている。一回倒産したのは知っていたけど、この頃だったんだなあ*1
 あと「ナシモトさん」と一緒に「ヨリチカさん」という人への言及があるんだけど、いったい誰のことだろう? ナシモトさんは梨本勝だろうけど。

 ちなみにこの本続編として「小説!? Dr.スランプの逆襲」もあるらしい。
 で、その続編の感想がここhttp://www33.ocn.ne.jp/~tsucchy/Arale/tsuji.htmlに載っているんだけど、他の部分はまあ良いとして、次の箇所がどうにも頂けない。

まず、この人の書くアラレちゃんはじめキャラクターの書き方はヘタクソである。辻さんが集英社からこの作品の執筆依頼を電話で受ける。で、担当はアラレちゃんにかわるのだが、その応対から「なんだこりゃ」といわせる内容である。あかねちゃんが「男が書くといったからにはよお、スカーッとしたやつ書けよな、スカーッと。これっぱかしでも手ェぬいてみな、ヤキいれてやッからそう思え!」とのたまうのは、もうただのヤンキーである。本物はもすこし俗物ではなく関西弁が入るようなおどけた口調である。

 この人が言っているのは、たぶんアニメと違うということなんだと思うんだけどさあ、アニメの脚本も辻真先が書いていたんだよね、実は。http://www.toei-anim.co.jp/lineup/tv/arale/
 それと

追記: 辻氏はすでに故人です。謹んでご冥福をお祈り致します。この人の最凶の作品は『小説北斗の拳』だと以前聞いたことがあるが、さすがに読む気にはなれません。

 まだ生きてます。出任せ並べるのも大概にしなさい。
 元のページによると「『インターネットアスキー』に掲載されたことがある」そうなんで、情報は正確を期してもらいたいもんです。



*1:実際には80年のことらしい。ウィキペディア参照。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E9%87%8E%E5%AE%B6