手鎖心中 (1972年)
井上 ひさし
文芸春秋 1972-10-15
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おすすめ平均
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「手鎖心中」を読んだ。井上ひさしの直木賞受賞作。京都から絵草子作家になろうと江戸へやってきた男が、知り合った材木屋の二代目との交流を描く、って嘘かも。
この二代目、伊勢屋栄二郎が笑いに取り憑かれて巻き起こすあまりにも間抜けな悲喜劇と、それに鬼気迫るものをみてしまう語り手ってな構図で話は進む。
栄二郎はただのピエロなんだけど、語り手の解釈が彼を特別な人だと読者に見せる手つきに感心。そして落としどころはそこだったのかというラストもやや面白い。
でも枚数が足りてないと思う。特にそう思ったのは栄二郎の絵草子「百々謎化物名鑑」が出たあと、栄二郎が浮かれて色々馬鹿をやるくだりで、こんなあっさり書き流していいのかと思った。吉里吉里人を書いた井上ひさしなんだから、こういうところに多量のネタを放り込みたいんじゃないかと。そして、そういう物量があったほうが、栄二郎の狂気にも似た笑いへのストイックな思いをより説得的に描けたんじゃないかと。
正直、期待したほどではなかったものの、それなりには楽しめるといったところ。
追記:2009.05.10
文春文庫から復刊された。
手鎖心中 (文春文庫)
井上 ひさし
文藝春秋 2009-05-08
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2013/06/13追記 キンドル版が出ていたのでリンクしておく。確認時の価格は420円。
手鎖心中 (文春文庫 い 3-3)
井上 ひさし
文藝春秋 1975-03-25
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