内木場努『「こだわり」の英語語法研究』

「こだわり」の英語語法研究
内木場 努

4758918074
開拓社 2004-10-20
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 参考書と研究書の違いは「こうなります」と書くか「なぜこうなるかというとこうだからです」と書くかの違いにあると思われる。無責任に読む側からすれば、内容が分かればという条件付きで後者の方が面白いのは当然だろう。
 本書が取り上げるのは「forget」「keep」「while」「until」「for」「仮定法」「wish」「since」「未来を現す現在形と未来を現在進行形」でうちuntilだけが二章を受け持っている。どの章もこれまで提出された説を例文から検討し、必要があれば修正案を提示するという形で書かれている。どの章も割と面白く読めたが、一箇所だけ印象的なところをあげるなら、第七章「有界性と時間副詞句」におけるforの分析中に出てきた例文。

Mary went to Paris for three days for three weeks.(Smith (1997))

 訳は「メアリーは3日間のつもりでパリに行ったが、実際は3週間滞在した」
 一個目のforは出発点における主語の意図を現し、二個目のforは行為の実行によって生じた結果の継続期間をあらわす。文の意味をカンで読むことは可能だが、それぞれの機能をきっちり説明されると気分が良いものだ。
 ところどころ文法の用語が英単語のままだったりして、慣れるまで困ったけれど一旦慣れてしまえば自分のような素人*1にも楽しく読める良い本。惜しむらくはところどころに校正が完璧でないところで、誤字程度は仕方ないにしても144ページの

If the environment did not change the genes, how could evolution have occurred?

(もし環境が遺伝子を変えることがあったら、どうして進化が起こりえたのであろうか.)

 は、どう読んでも「環境が遺伝子を変えることがなかったら」にならないとおかしいと思うのだけど、なぜこれがチェックを通り抜けたのか不思議だ。っていうかもしかして俺の方が誤解してるだけか? 
 この部分含め、論旨は分かりやすく、かつ納得も出来るように書かれている(他の本も読んでみたい)ので、上の引用部分がこちらの誤読でなく本当にミスなら勿体ないことなので、是非直しておいて欲しいと思う。

 それはそうと本書は開拓社叢書のひとつだったのね、読んだことのある奴と表紙が全然違うから気付いてなかった。

*1:どの程度のレベルかと言うと、現在進行形が未来を現すことを一昨年くらい前に友人から教えてもらうまで知らなかったくらい。