佐久間治『ウソのようなホントの英文法』

ウソのようなホントの英文法
佐久間 治

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研究社 2009-02-25
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 以前読んだ「英文法のカラクリがわかる(amazon)」が面白かったので読んでみた。全部で四章に分かれていてそれぞれ「第1章 学校で教えられたのと違うゾ!」「第2章 学校で教えられなかった文法」「第3章 辞書の解説と違う文法・語法」「第4章 文法用語に不備がある」となっている。4章は自説の開陳で、それ以外の部分は英語を母語にする人たちのフォーラムに質問をポストして、その結果を使って執筆したとのこと(ただしフォーラム名が明らかにされてはいない)。

 英文を読んでいて、なんだこりゃ? と思ったときに参照にするといいかもしれないとは思った。ただし、高校生なんかが読んだりすると、逆に混乱して成績を下げることになりかねない危険も孕んでいる本だ。ってのは、要するに日本で言われる英文法ルールは相当古いものがそのままだったりするから、こういう調査をすると「もはや使われていません」とか「最近は問題なしです」とか出てくるのは必然だけど、受験なんかではそれがないことになっているからだ*1

 で、以下は自分用メモ。誰かの役に立つなら嬉しいが、すでに述べたようにソースが不明なので、100パーセントの信頼はおけないが、たとえばYAのペーパーバックを読んだりするときには、日本の文法書よりも信用できるかもしれないなあというところを列挙してみる。

  • so as to do には「結果」用法がある。
    • in order to do とは結果用法があるかないかの部分で決定的な違いがある。in order to doには結果の用法はない。挙げられていた例文はこんな。

The tree fell down so as to block the road.

「木が倒れて道路をふさいだ」
p.108

 確かに目的に取ると木が道をふさいでやろうと倒れてみせたことになるので、文脈なしでは読めない気がする。

  • I was like = I said
    • 単純に知らなかったが、「アメリカ英語中心」かつ「口語」に限るとよく使用される言い方らしい。he saidだったらhe was likeと言う。現在形のI'm likeとかhe's likeという表現もあるが、そう言ったとしても内容は過去を表すそうだ。しかし、これで最新と思ってはいけない。すでに若者のあいだではlikeをallにした表現(つまりI was allとか he was allとか)という表現まで発生しているそうだ。なんでallなのかは「わからない」とのこと。著者は「〜みたいな」と取っておけというけれど、むしろ「なんか〜」ではないかと思った。
  • A, if notB =「Bと言わないまでもA」ではない。
    • なんと! これはif notを譲歩として取る表現だが、実際の使用は仮定と考えた方が良いらしい。例はこんな感じ。

It's my really terrific privilege to introduce a man that I think is one of the great mayors, if not the greatest, in New York City.
p.146

 譲歩で訳すと「最も偉大とまでは言わないが、偉大な市長のひとり」という意味になるが、スピーチの主旨が「市長は素晴らしいんです」のときにそんなこと言うわけがない。というところから、このif notは「もしそうでないとしたら」という仮定の意味を表し全体としては、「彼は歴代市長の中でも最も素晴らしい市長であり、もしそうでないなら、素晴らしい市長のひとりに過ぎないことになってしまう(そんなわけあるか)」という文意になるのだそうだ。本来的にはこっちの読み方でいけることが多く、それで駄目なときに譲歩を検討しろと勧めている。山勘的にはif notみたらratherと思えってことかなと思った。
追記2019/05/31当時はマジで驚いたこのif notも辞書に入るようになって久しいのだけど、上の例文に訳を当てはめると「彼は偉大な市長のひとり、いやひょっとすると最も偉大な市長かもしれない」になるので、この解説はちょっと微妙かもしれない。

  • A not to say B = 「Bと言わないまでもA」ではない。
    • なんと!(ry 出ている例文。

She is pretty, not to say beautiful.

p.148

 これネイティブ・スピーカーの理解は「彼女はかわいいばかりでなく、実に美しい」になって、言いたいことはBの方になるんだそうだ。(大学受験までの問題で訳を聞かれたら「美しいとは言わないまでも可愛い」しか正解にならないよ!)
 これ日本語だと「ってのは言い過ぎかな」みたいなフレーズになるのかも。婉曲表現なんだろうと思われる(俺が思っているだけなので裏は取ってない)。他の例文では「He was large, not to say fat.」ってのがあって、そこに寄せられたイギリス人のコメントによれば、本音はfatだとのこと。

 最後のふたつは案外役に立ちそう。そしてI was likeは俺が例文にぶつかる前に死語になってそうな予感がひしひしする。

 こんなことが一冊ずっと書いてある本。興味がある大人は読んでみても面白いんじゃないかな。「英文法のカラクリがわかる」も楽しかったよ。

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*1:個人的には喋るより読む方が断然多いので、最新事情にキャッチアップすりゃ良いってもんじゃない気がするので、受験英語批判みたいのに全面的には賛同できない