404 Blog Not Found:ガチな歯ごたえ - 書評 - 日本人なら必ず誤訳する英文という記事で知った本。著者はダ・ヴィンチ・コードの翻訳者。ついたコピーは「英語自慢の鼻をへし折る!」。
俺は英語を聞くのも話すのも書くのも駄目だが、読むくらいならある程度いけると思っていたので、「折れるかどうかやってみようじゃないの」と勇んで取り組んでみたわけだが……わけだが……。
折られました(えへっ)。
基本的には自信過剰気味(みんなに言われるんだからきっとそうなんだよ)な私ではありますが、と丁寧な話し方になるほど難しい問題もあった。ここで難しいというのは、トリビアな知識の話だけじゃないのが恐ろしい。それなら「まあ、覚えたしいっか」となって、あんまりショックはない。たとえばwillという単語に遺書という意味(名詞)や、〜しようとする(動詞)という意味があるとか、shanghaiという単語は「無法な手段で船に連れ込んで水夫にする」という意味だとか、eggを動詞で使うと「〜をあおりたてる」という意味になるとかそういう知識を知らないと訳せないっつー場合だと、どっちかっつーと「面白〜い」と喜んで終了。ところが本書に出てくる難しい文と来たら、訳せないんじゃなくて読めなかった。ボキンである。
鼻骨が複雑骨折した感じなんだけど、とりわけクリティカルヒットだった一例だけ引用しておく。
They routinely write checks of ten twenty a hundred thousand dollars.
こいつの正解が「彼らは日ごろから、1万ドル、2万ドル、10万ドルの小切手を切っている」であるというのを理屈だけで説明された日には、背筋を正して「復習します」というほかない。精読本は何冊も読んできたけれどトップレベルの難しさではないかと思われる。そしてなんか楽しいな、これは良いなと思って読み進めていたら、中休みコラムっぽい読み物で
越前 ぼくは駿台予備校に2年かよっていて、英語については故・伊藤和夫先生に教わりました。(中略)実は「英語を左から右へ読む」というこの本の大きなテーマは、伊藤先生からそのまま受け継いだといっても過言ではないんです。
とあって、腑に落ちた。この楽しさは英文解釈教室を解いていたときの楽しさだったんだな。とりあえず読み方の持ちパターンが増えたので、非常に有益だった。この人の英語本が他にも出たらきっと買う。
追記:忘れてた。これだけはメモっとこうと思った部分があったんだった。
そもそも、英語において、itがどの単語を受けるかについてのルールは存在するのでしょうか。もちろん例外はありますが、一定の原則はあります。そして、これは日本語において「それ」がどの単語を受けるかについてのルールとは微妙にちがっているのです。
p.166
日本語で「それ」と言った場合に受けるのは直前の名詞や名詞相当語句であることが多いが、英語の場合はというと、
英語は、主語と動詞が根幹をなす構造が日本語よりもはるかにがっちりしていて、なかなか崩れません。このような言語では、itが文の主語である場合、それがさすのは「直前の名詞」ではなく、「直前の文の主語」であるほうがむしろ自然であり、そちらが原則となります。同様に、itがその文の目的語なら、「直前の文の目的語」をさすのが原則です。
筆者はこれが100パーセント通用するルールではないと言明しつつも、「英語を読んでいくうえでの第一印象というか、直感はそうあるべきで、それで意味が通じないときにはじめて別の可能性を探るという姿勢を保つべきだ」と主張する。
これは今まで知らなかったことだったので、非常にためになった。具体例の英文は以下。
They had to turn down the offer, for their club had strict rules. It should be improved, but as a matter of fact it was not.
彼らはその申し出を拒まざるをえなかった。彼らのクラブにきびしい規則があったからだ。そのクラブは改善されるべきだが、現実にはそうもいかなかった。
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2013/06/15追記 キンドル版が出ていた。確認時の定価は450円。これ、結構お買い得ではあるまいか。
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