ロレンス・スターン 朱牟田夏雄訳『トリストラム・シャンディ』(上)

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)
ロレンス・スターン 朱牟田 夏雄

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岩波書店 1969-08-16
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 原題は「紳士トリストラム・シャンディーの生活と意見」なのに、脱線が激しすぎて上巻の最後になってやっとシャンディ氏が生まれること、真っ黒いページだの真っ白いページだと、謎の落書きみたいな線が書かれたページだのがあることなど、十代終わりにはじめて紹介を聞いたときは、なんて面白そうなんだと震えたもんだった。二十代で実際に(多少退屈しながら)読み、最後のほうで個人的に驚く仕掛けに遭遇して、そのインパクトで名作認定し、突然無性に読みたくなって、このあいだからつらつらと再読を始めたのだった。
 作者についてはウィキペディアここ、作品についてはウィキペディアここで、日本にはじめて本作を紹介したらしい夏目漱石の文章はここで、本文の抜粋をふんだんに盛り込んで紹介してくれてるのはここ、原文を読んでみたい人はこちら
 改めて読むと、リンク先にも引用されている冒頭で、時計の話をしているのとか、作品内容を予告してるんだなあと思ったり。脱線しまくって、回想場面の途中で入れ子の回想がやってきたり、そうかと思うと、執筆しているトリストラムと友人がしゃべり出したりする本作は、時計(つーか、時間)を(隠し?)テーマのひとつにしているのかもしれない。
 叔父トウビーとトリムのコンビ、お父ちゃんやスロップ医師といったキャラクターは今回のほうが親しみが湧くように思った。まあ、二度目なのであたりまえなのかもしれないけど。
 全然関係ない話を突然はじめるけれども、先日『バグダッド・カフェ』って映画をはじめて見た。名作とずっと言われてて、『スラムダンク』の第一話でも言及されている(はず)。で、実際に見てみたら、つまんなくないっていうか、たぶん面白いんだけど、何がどう面白いのかよくわからない。ホラー映画のパロディーに見えるところか、屋根に登ったおばちゃんがホースで一気に埃を流す爽快感か。はたまたはたまた。
 『トリストラム・シャンディ』のことを書こうとすると、それと似たような気分になる。ええと、嘘つきにされたくないので、声を大にして言っておくが、『トリストラム・シャンディ』と『バグダッド・カフェ』には似ているところは何もない。くれぐれも『バグダッド・カフェ』が好きだから読んでみようなどと血迷わないように。共通点は「個人的には悪くないと思うけども、人になんて紹介したらいいのかわからない」という一点だけ。映画なら「まあ見てよ」の力業がありえるが、『トリストラム・シャンディ』に関してはそれも無理。一回目を読んだときも決してページターナーではなかった。
 けれども、ぼくはこの本が好きだし、できればずっと本屋に並んでいて欲しいので、本屋や図書館で見かけたら立ち読みしてみてとは言いたい。できれば10ページくらい。それで面白ければ、なんとなく読んでいけるんじゃないかという気がする。もし、面白いと思ったら、読んだ端から前の部分を忘れたとしても、それなりに場面場面(というか、場面転換・場面転換)は楽しいはずである。自分は前回も今回もそんな読み方しかできてないが、とても楽しい。
 幸いキンドル版も出ている(確認時の価格は1036円)ので、冒頭サンプルは簡単に読むことができる。

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫)
ロレンス・スターン 朱牟田 夏雄

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