ハリ・クンズル木原善彦訳『民のいない神』

民のいない神 (エクス・リブリス)
ハリ クンズル 木原 善彦

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白水社 2015-02-13
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 このタイトルにこの表紙、でもって帯がこんな感じ。

ピンチョンとデリーロの系譜に連なる、
インド系イギリス作家による、
「超越文学(トランスリット)」の登場!

砂漠にそびえる巨大な岩山「ピナクル・ロック」。
そこで起きた幼児失踪事件を中心に、アメリカ先住民の伝承から、
UFOカルト、イラク戦争金融危機まで、
いくつもの時空を往還し、予測不能の展開を見せる傑作長編。

 期待するなってほうが無理って気分で読み出したのだが、読み終わった今の感想は正直期待が大きすぎたというところ。
 煽りに嘘はなかったんだけど、あえて言えば幼児失踪事件は、それほど中心的な働きをしていないような気がした。UFOカルト、その他の要素が従属した役割を果たしていないというか。ああ、でも、幼児失踪事件が複数形なら、中心といえないこともないかなあ。ピナクル・ロックという場所に定点カメラを据えて、そこに映るあれやこれやを提示しましたって印象が残った。もっともおれが受け取ったこのまとまりのなさが物語の全体像と合致しているともあんまり考えられないので、こちらの理解が追いつかなかったというのが、正しいところだろう。再読すれば印象が変わるかもしれない。再読するかどうかは微妙なところだけど、今段階では非常におさまりが悪い気分。この引っかかりが消えなければどっかで読み返すと思う。
 著者の意図は全然違うんだろうけど、読者の期待としては、上記要素の力業による統合が見たかったんだよなあ。