『にぎやかな落ち葉たち 21世紀はじめての密室』

にぎやかな落葉たち〜21世紀はじめての密室〜
辻 真先

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光文社 2015-02-20
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北関東の山間にたつグループホーム「若葉荘」。世話人は元天才少女小説家。居住者は自在に歳を重ねた高齢者たちと、車椅子暮らしながら筋骨隆々の元刑事と、身寄りのない彼の姪。にぎやかでおだやかな日々は、その冬いちばんの雪の日、とつぜん破られる。密室に転がった射殺死体の出現によって──。トリッキーな仕掛けに定評のある巨匠が、稚気と叙情と茶目っ気を縦横に駆使して描く、本格ミステリ長編!

 将棋の棋譜を意匠とした天井のある部屋で目に鉄の凶器を突き立てて被害者が死んでいて、開いた窓からどんどん雪が入ってくるという事件発生場面は、おお、どうなるの? と身を乗り出したんだけども、そこに至るまでに6割がたのページが割かれていて、過去のあれこれが語られているのだが、これが近過去+遠過去の二段階あり、時系列のようなそうでもないようなという具合の進行で、著者が思いつきの数々をあんまり整理しないで全部ぶち込んじゃった感じが強い。焦点が絞れてない感じがした。これは死体が出たあともそうで、結局メインはなんの話? と思い始めたところで解決篇が始まる。途中大胆すぎるほど机上の空論めいた話も混じる。探偵役と犯人の動機部分が核だったんじゃないかと思うんだけど、とにかくノイズが多かった。前半のセクハラギャグはもとより*1、元天才少女小説家って設定も……いらなかったんじゃないかなあ。あといちばん訴えたかであろう、あの主張もいくらなんでも浮いていた。ラストにしてもなぜそうしたのか意図がまったく見えない。
 ただ、ファンなので、こういう未完成に思える剥き出しさ加減には捨てがたい魅力を覚えたりする。絶対に失敗作だけど、読み終えたときにはなんかそれもありって気がした。もっとまとめて欲しかったけど。

*1:副題が21世紀はじめての密室(意味はわからなかった!)なのに、こんなんで笑いが取れることになっているみっともない作品世界はせいぜい1980年代だと思ったし、読むのやめようかとさえ考えた。現代を舞台にした作品ではこんな要素は疵にしかならないと個人的には思う。