北海で殺そう (トクマ・ノベルス)
辻 真先
徳間書店 1986-05
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トラベルライター瓜生慎シリーズ第9弾にして、第一期完結編。読んだのは去年。
社長令嬢の家出をきっかけに事件は始まり、慎は北海道へ。「ブルートレイン北へ還る」に登場した俊や坂西夫妻、鮫村などが再登場。電車の中での人間消失や雪祭りでの死体消失など消えるトリックが使われている。悪役として登場する天城通商のモデルは西武グループだろうか。ラストは真由子の出産。不動産流通の雑誌を文英社が創刊するという書き出しには土地高騰の時代が感じられる。
文庫本の解説者として登場する大沼克之が最後のちょっと出演している。彼の解説の大部分は仲間ボメにしか見えないが、一箇所だけ「もう少し勿体をつけてくれたら有難がるムキもあるだろうに」という部分は同感だ。
本書の時代を感じさえた部分をリスト化してみた。
- ミンキーモモの封筒(ミンキーモモは昭和58年放映だったはずなのだが、まだグッズは流通していたのか?)
- アドレスブック(懐かしい)
- ホームライナー(特急の回送列車を流用したもので1985年頃から始まったらしい)。
- 「フォーカス」「フライデー」
- ニャンニャンする
- チープ・シック(なんじゃそりゃ)
- 今っぽーい(イマいなんて言い方もあったようだ)
- 寝るよりセックスするの方が陰湿に聞こえない(そうだったのか。)
- 小学6年生の女の子が18だと言ってスナックでアルバイト(昔からあったのね)
- カメラ小僧(この頃から言われるようになったのか?)
- キャプテンシステム(国鉄の作った情報伝達のニューメディアでビデオテックスの一方式と説明されているのだが、それ自体がもはや意味がハッキリしない。)
- 昨年の大事故(恐らく日航機の墜落事故)
- この年雪祭りでは高さ制限が行われ始めた。(ワッペンも売られていたそうだ)
- 網走監獄(この本が出た頃、博物館としてオープン。住所は網走番外地)
- チュービング(北海道の遊びのひとつらしい)
で、現在も続いている瓜生慎シリーズの第一期の感想をすべてつけ終えたので、ついでにリストを作ってみた。
トラベルライター瓜生慎シリーズ第一期リスト
振り返ってみると印象に残っているのは、「死体が私を追いかける(感想)」「ローカル線に紅い血が散る(感想)」など初期に集中するなあ。本作のラストも作者の主張が強くなりすぎたきらいがあって、ちょっと自分には辛いところがあった。上記二冊はかなり面白いんだけども。