ピーターパン

 本屋でピーターパンのペイパーバックを見かけた。知ってるような顔をして、実はミュージカルでしか見たことがなかったので買って、読んでみたら冒頭いきなり分からないところが出て来た。以下そこまでを引用。

All children, except one, grow up. They soon know that they will grow up, and the way Wendy knew was this. One day when she was two years old she was playing in a garden, and she plucked another flower and ran with it to her mother. I suppose she must have looked rather delightful, for Mrs. Darling put her hand to her heart and cried, "Oh, why can't you remain like this for ever!" This was all that passed between them on the subject, but henceforth Wendy knew that she must grow up. You always know after you are two. Two is the beginning of the end.
Of course they lived at 14, and until Wendy came her mother was the chief one.
(太字は引用者)

 年齢の話をしていて、いきなり「lived at 14」とか言われたので、14歳のことかと思ったが、theyがウェンディだけではないので、なんのこっちゃと。しかも「もちろん」とか言われても。
 分からなければ訳書を見るのがいいだろうと、新潮文庫版の「ピーターパン」の探しに行って見つけてページを開けてみてのけぞった。こんな風に始まっていた。

 今ではすっかりデイヴィッドのおなじみになってしまったケンジントン公園をよくご存じないと、ここにお話しする冒険談がちょっとおわかりにくいくらいのことは、私がいわなくたって、あなたがたにはわかりきったことでしょう。この公園は王様がお住みになっていらっしゃるロンドンにありますので、熱でもあったりして、ひどくお顔が赤くなければ、毎日だって行けるところですが、今までに、誰一人といって、この公園を隅から隅まで歩いたという人はありません。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102104011/taidanakurashi-22/

 まったく関係ない文章になってるじゃねえか!
 あんまりにも意味不明だったので、帰宅後ウィキペディアを調べてみる。

ピーター・パン (Peter Pan) とは、イギリス、スコットランドの作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲『ケンシントン公園のピーター・パン』、小説『ピーター・パンとウェンディ』などの主人公である架空の少年である。

現実の世界では、この架空の少年は1929年4月以来病に苦しむ子に救いの手を差しのべる。作者は「金額を決して公表しないこと」を条件に版権を、ロンドンのオーモンド大路小児病院に寄付し、これは2005年現在も続いている(後述)。

「ウェンディ」というよくみられる女性の名も、ピーター・パンの登場以前には全くといっていい程存在しない。yで終わる名であるにも拘らず、その元となった名が存在しない(yで終わる名前は殆どすべてが「通称」若しくはそれに由来し、(Maria ->Mary, Robert->Bobby ...)起源となる名が存在する)の理由により作者の創作による架空の名だったといわれている。

ピーター・パン - Wikipedia

 ということで、ピーターパンには何種類かのバージョンがあって、ペイパーバックの方は「ピーター・パンとウェンディ」(日本語訳)であることが分かった。新潮文庫版は「ケンジントン公園のピーターパン」(日本語訳ただし冒頭部分はない。)を訳したものであるようだ。
 ちなみにリンクを貼った「ピーター・パンとウェンディ」では問題の箇所はこんな風に訳されている。

そうそう、ママとウェンディは14番地に住んでいて、ウェンディが生まれてくるまでは、ママが一家の花でした。

http://hw001.gate01.com/katokt/peter001.htm

 なんと住所! なぜに住所! そして「Of course」は「そうそう」なのか? と、ジーニアスを調べてみたら、確かにそんな意味があって勉強になった。

(2)《略式》あっそうだ(ったね),(ああ)そうそう《◆当然なことに気づいたり,思い出したりする時》
“I'm Tom's brother.”“Of course. That's right.”
「トムの兄です」「そうそう, そうでしたね」.

 とはいえ、ここで何を思い出してるのかよく分からないし、果たしてこれは住所でいいんだろうかと妙にひっかかったので、思い切って「lived at 14」でググってみたら、こんなページがヒット。
“ピーターとウェンディ”を読む

 勿論のこと、みんなは14番地に暮らしていました。
(中略)
 最初に “of course”とあるのは、語りつつあるお話の筋について読者が既に了解済みであるかのように話を進めるという、伝統的なおとぎ話の手法を取り入れているものであると同時に、劇Peter Panの上演の後しばらくたってからこの小説版Peter and Wendyが出版された経緯を反映してもいる。つまりPeter and Wendyを手にした読者の大部分が、このお話の筋のあらましを実際に知っていた筈なのである。この後も“of course”が繰り返して用いられることとなる。

 なるほど! そういうことだったのか。いや知ってるつもりで知らないことはいっぱいあるなあ。「lived at 14」もやっぱり住所の話で良いらしい。
と満足したのでこの項終わり。結構楽しい作業だった。