ロレンス・スターン 朱牟田夏雄 訳 トリストラム・シャンディ(下)

トリストラム・シャンディ 下 (岩波文庫 赤 212-3)
ロレンス・スターン 朱牟田 夏雄

4003221230
岩波書店 1969-10
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 ようやくと読了。叔父トウビーの恋物語が始まったなあと思ったところで終了。ところどころ笑えるところがありつつも、全体これはなんの話なのかという読みながら何度も考えた問いに、作者自ら答えて話は終わった。話題が牛のことになる巻末、トリストラムの母がこう叫ぶ。

ああ神さま! 私の母が申しました。一体これは何の話なんでしょう!――
そりゃあモー根っから他愛もない、おとおうし話(落とし話)というわけさ、ヨリックが言いました――そういう類の中ではまあこれでも、もうしぶんのない話のほうなのさ。

 おあとがよろしいようで。

 ところで、本書を読んでいる間に、何冊かの本でトリストラム・シャンディへの言及を見た。たとえば辻潤の「ダダの話」((「絶望の書|ですぺら」(amazonn)所収)では、本作をして「ダダの聖書」であるという指摘が為されていたし、「書きたがる脳」(感想)にも、ライターズ・ブロック対策の例として、本作の一部が引かれていた。だからなんだというわけではなく、読んでるものへの言及にぶつかる偶然が楽しかったのでメモしておく。

 それと、ちっとも意識していなかったのだけど、これはフランス革命の少し前の時代に書かれているから、作中現れるフランスはルイ十六世が統治していた時代なんだなと、七編を読んでいるときにふと気がついて、なんかすげえと感じ入った。フランスでもヴォルテールが紹介していたので、トリストラムは読まれていたのだとか。