夏の思い出1

 先日生まれて初めて裁判所というところに行った。原告だったわけでも被告だったわけでもなく、単に傍聴で。
 生まれて初めてのことなので、建物のでかさにビビり、持ち物検査にビビり、右を向いてもビビリ、左を向いてもビビリ、途方に暮れていたら不審者だと思われるのではないかとビビリ、そりゃあビビッたのだった。思わずついったーで「裁判所なう」とか呟いたら多少気分がマシになるかと逃避行動したくもなったが、なんとまあ不謹慎ではないかという自主規制が働いてそれもできず、喫煙所(立派な喫煙所だった)でタバコを吸いながら、これはおっかない場所ですよなどと感心し、エレベーターで地下に下りて、おー食堂も郵便局も本屋もあるよすげーと無意味に見学気分を充実させ、五百円のケーキセットを食べながら、隣の席で弁護士さんたちが難しい雑談をしているのを聴くともなく聴いたりしていた。
 そのあと、どこにいても間が持たない感じでブラブラとしていたら、なんというか、こんなところで目撃するのは新鮮すぎるスタイルの人と出くわした。
 その人はチューリップハット(でいいのか?)に金髪でひげ面にデニムっぽい素材のロングスカートでスニーカーを履いていた。絶対知り合いじゃないのに、なぜか知っている人のような気がする。誰だっけ。
 あ、わかった!
 この人だ
 写真より髪は短くなっていたけれど、チャームポイントはひげ、スカートって記述に偽りがないことを確認できた。なんというか、あんた大物だよ、と思った。声を掛けてみたかったのだけれども、何大噴火さんだったか、思い出せなかったので、心の中で応援だけしてそそくさとその場を後にしたのだった。