ロバート・ルイス・スティーヴンソン夏来健次訳『ジキル博士とハイド氏』 

ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)
ロバート・ルイス スティーヴンスン 夏来 健次

B007TAKIJW
東京創元社 2001-08-31
売り上げランキング : 550

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 昔一度読んで、割と印象がよかった本。『宝島(感想)』も面白かった印象があるので、スティーヴンソン好きなのかも*1。再読のきっかけはナボコフの『文学講義』(amazon)を読んだときに、本書の内容をほとんど忘れていることに気づいたこと。面白かった記憶はあるしそのうち再読して思い出そうと。
 であらすじは端折るけれども、読み返して感心したのは、これがちゃんとオチを知っていても楽しめる本になっているという点で、ハイドとジキルの関係を視点人物のアタスンは当初、恐喝の加害者と被害者だと考えて、ジキルを守らなくてはとか思う。ところがってオチを先に知っていると、こういうところが面白くてならない。あと、ジキルとハイドは二重人格的に解釈されているような気がするのだけども、今読んで連想するのはむしろ、ケヴィン・ダットンの『サイコパス 秘められた能力(感想)』に出てきた脳をいじってサイコパスに変身してみよう的なくだりで、ジキルとハイドの場合外見が大きく異なることで人格の変異を表していたいたのだが、今同じような話が書かれたら、そんなことはしなくても脳の話してれば説得力があるかもしれないと感じた。実際、ハイドはサイコパスっぽいし、ダットンの本には一流の医師、弁護士、スパイ、トレーダーなどにもサイコパス的な心理の反応が見られるというようなことが書いてあったので、ジキルの言っていることは現代でも十分通用しそう。
 あと昔読んだときには、にわかに楽しくなってきやがったと前のめりになった中盤の殺人事件があんな適当に処理されていたのにも軽く驚いたり。動機とか現代的すぎて唖然となった(だから忘れてたんだな、きっと)。
 そんなわけで大変楽しく再読できた。また十年後くらいに読み返したい。

*1:『宝島』の感想を読み返したら、『新アラビア夜話(感想)』が面白かったから読んだって書いてあるので、今のところ外れなしの模様。