流星の絆

 今クール唯一見ていたドラマが「流星の絆公式サイト)」。原作東野圭吾、脚本宮藤官九郎。放映開始直前のCM攻勢にやられたのか、なんとなく一話を見たら止められなくなった。俺にとって東野は動きがない印象のある作家でイマイチ苦手、宮藤官九郎の脚本は悪ノリが過ぎる印象でイマイチ苦手。なのだけど、ふたりのコラボレートを想像してみたら、自分にとって苦手なところが補完されあうんじゃないかと予想したんだけど、結果想像以上に面白い仕上がりになっていた。

 横須賀市にある洋食屋『アリアケ』の子供である功一、泰輔、静奈の3人は14年前、家を抜け出し、しし座流星群を見に行った。そして帰ってきてみると、両親が何者かに刃物で殺害された。彼らは身よりもなく、養護施設で幼少期を過ごす。3人の目標は大人になったら、両親を殺した犯人をぶっ殺すということ。手がかりは現場に残された傘と泰輔が見た謎の男の横顔だけ。
 静奈が詐欺にあい、その詐欺師から金を取り返すために詐欺を働いた3人は、それに味を占めて、犯罪を重ねていた。そんな中、洋食チェーンの御曹司である戸神行成をターゲットにした詐欺のシナリオ実行中に、彼の父親・戸上政行の姿を見た泰輔が言う。「間違いない。あいつだ」。功一は急遽シナリオを変更。政行が犯人である証拠をあぶり出し、警察を政行へと誘導しようと策を練る。
 しかしひとつ誤算があった。行成の桁外れの人の良さに、静奈が惚れてしまったのだ。

 というようなあらすじ。復讐物とロミオとジュリエットストーリーのハイ・ブリット。詐欺の場面はミニ番組のような構成で作られ、それぞれ騙される人間のナレーションが入り、それが良い感じに間抜けで、本筋から離れた余興という位置づけプラス犯罪者への共感に抵抗をなくさせる演出がなされているのも上手い。

 役者のみなさんもよく頑張っていたと思う。特に静奈を演じる戸田恵梨香がデートの約束を電話で取り付けて、切ったあと鏡を見ると、凄い笑顔の自分がそこにいる。嬉しい自分と相手を騙さなければいけない自分のあいだで引き裂かれ、沈み込むところなんて、ベタだけど熱演だったので、可愛そうで胸が熱くなった。また戸上行成を演じる要潤のピュアとも馬鹿ともつかない一途さも、素晴らしかった。これは宮藤官九郎の悪ノリが良い方に出たんだろうと思う。原作読んでないからわからないけど。
 一方個人的に感慨深かったのは、母親役をやっていたりょうである。初めて見たのは「ロング・バケーション」で竹野内豊の恋人役で、そのときはクラブの店員(だったと思う。もうよく憶えていないけど)をやっていたんだった。いつの間にかエプロンつけたお母さん役をするようになっていたんだなあ、としみじみした。そりゃあこっちも年を取るわけである。

 あ、二宮和也錦戸亮のふたりも良かった。特に「刑事遺族」の格好をしているところと、OPの映像が妙に素敵だ。

 ラストのここが良かったとか、この伏線が上手かったとか、そんな話をしたくてたまらないんだけど、ドラマは再放送もあるし、DVDも来年の4月にリリースだそうなんで、ネタバレは止めておく。とりあえず面白かったよ。毎週、これのために金曜日の十時は家にいるようにしていた。テレビをスケジュールに組み込むなんていつ以来のことだろう。「プライド」以来か? 終わってしまってちょっと寂しい。