外国人研修生関連の記事をいくつか紹介

 こんな記事を読んだ。
外国人研修生に強いられる過労死、発生率は日本人の2倍 - 現代日本に横行する奴隷労働・人身売買|すくらむ

 タイトルの通り、国際研修協力機構*1(JITCO)が発表したデータ*2をもとに外国人研修生が悪条件でこきつかわれているよ、って話なんだけれども、天草縫製実習生強制労働事件という裁判の原告の証言が出ている。引用してみる。

 私は、2006年の1月まで中国の縫製工場で働いていましたが、日本で働きたいと思って、中国の派遣会社に4万元を払い、日本に来ました。4万元は、日本円で70万円くらいです。中国での私の給料は月に1,000元くらいだったので、3年分以上になります。このお金は、親戚と親の友人に借りました。また、私が契約に違反したら、保証人になってくれたいとこが15万元も払わないといけません。

(中略)

 私の仕事は、女性用下着の縫製です。スキールでの仕事は、本当にひどいものでした。来る前に中国でK社長から面接を受けたときには、働くのは午前8時半から午後5時半までと聞いていたのですが、実際には夜10時頃まで、遅いときには午前3時まで働かされました。厳しいノルマが終わらないと、残業代も出ませんでした。社長がこわい顔で、テーブルを叩きながら、「ノルマは多くない」「バカ」などと怒鳴るので、仕事をやめることはできませんでした。


 休みは、月に1回くらいで、決まった日というわけではありませんでした。休みの日だからといって、自由に外出することもできませんでした。

 これほど休みなく長時間働いても、給料は月に6万円くらいしかもらっていません。残業代は時給300円しか出ません。社長には「バカだから給料が安い」などとよく言われました。


 給料は、銀行の通帳に入るようになっていて、貯金をさせられていました。この通帳は、来日してすぐ、K社長に銀行に連れて行かれて作らされたもので、私の印鑑と一緒に社長がずっと管理していました。そして、社長は、この通帳と印鑑を使って、私の給料を使い込んでいたのです。多いときには25万円も使われていました。


(中略)

 寮を逃げ出す人もいました。私も逃げ出したかったのですが、中国の派遣会社に支払うためにした借金を返せなくなるので、逃げることはできませんでした。大きな借金をかかえたまま中国に帰されるのが一番恐ろしいのです。


 協同組合の人や理事長からは、「仕事をしたくないなら、中国に帰ってください」、「あなたたちが帰っても、すぐ別の中国人が来る」、「あなたたちの要求が、日本人と同じなら、中国人を使う必要なかったじゃない」などと言われ、とてもショックを受けました。私たちは、日本人よりも安い給料で、長い時間働かせるために、中国から雇われたのです。(中略)


 国際研修協力機構(JITCO)や福岡の入管に、協同組合を指導してくれるよう、お願いにも行きましたが、何もしてくれませんでした。

 あんまりにも強烈だけどどこかデジャヴと思ったら、紀田順一郎の「東京の下層社会(amazon)」って本に書いてあったことと似てるのだった。ちなみにこの本は明治時代を取りあげた話で、そりゃあ昔の日本人一般の品性なんて信じられるわけねえだろうがよ、って思える本だった記憶があるが、引用の事件は21世紀の日本で起きているのかと思うと心底うんざりさせられる。
 例によって情報に疎いものだから、この件は初めて知った。あんまりポカーンだったものだから、一応チェックしてみるかとググってみたら、こんなエントリを見つけた。
知っていますか、現代日本の恥部「中国人実習生強制労働事件」 - 発達障碍者と非発達障碍者の共存をめざして - Yahoo!ブログ
 もうね、どこ引用したらいいんだかわからないからリンク先を読んで欲しい。とりあえず引用した事件は俺の希望とは違い、実話のようです。
 弁護側から見た裁判のここまでのあらましはこちら。
NPJ 中国人実習生強制労働事件/熊本 2009.4..26
 上記引用部分の証言ソースは記事内の「意見陳述書 原告 谷 美娟 (グ・メイジャン) 2008.5.9」というPDFであるようだ。

 で、そのときにこの事件を担当している弁護士の方のブログを発見した。で、そこには他の事件の話も書かれていた。
○○弁護士○小野寺信勝の徒然日記○○ : 菊池・玉東農業実習生提訴

 中国人農業実習生2名(熊本県菊池市の酪農実習生と玉東町の施設園芸実習生)を原告として、社団法人熊本県国際農業交流協会熊本市)と受入れ農家2名を被告として未払賃金等の支払いを求める訴訟を提起しました。

 受入れ農家は、原告らに対して、研修期間中から制度上禁止されている残業や休日労働をさせ、さらに残業代は研修生には350円、技能実習移行後は400円と最低賃金を下回る残業代しか支払っていませんでした。

 また、今回被告となっている熊本県国際農業交流協会は、先行する阿蘇農業実習生訴訟の被告でもあり、外国人研修制度上の第一次受入れ機関として、研修生・技能実習生を受入れてきました。受入れ農家に最低賃金以下の残業代を指示していた疑いがもたれています。

 熊本での外国人研修生・実習生を原告とした訴訟はこれで4件目となります。

 熊本だけでこの手の訴訟が4件もあるのか。
 記事を眺めていったら、大分でも似たような訴訟が起きているという話もあった。
○○弁護士○小野寺信勝の徒然日記○○ : 大分県由布市縫製実習生事件

 朝日新聞(2009年2月3日付)で大分県由布市の縫製会社において中国人実習生が違法労働させられた事件が報道されています。

 労働条件は、勤務時間はほぼ連日午前8時から翌午前3時まで、休憩は昼食15分、夕食30分だけ。給与は完全出来高制で、洋服1枚30〜70円、残業時間帯は袋詰め1枚につき8円。さらに、給与からは寮費、光熱費約2万円、管理費3万円が控除され、4万円を会社名義の口座に振り込まされていたということです。手取額は月によって異なるが、少ない月は3万円程度だったそうです。

 以前、彼女たちの相談を受けたことがあります。相談と言っても社長に外で人で会うことを禁止されていたので我々が由布市に赴き、こっそり寮を抜け出してもらっての相談でした。彼女たちは、一見して疲弊しておりとても仕事に耐えられる状態ではありませんでした。何とか力になりたかったのですが、借金や違約金から強制帰国をおそれて行動を起こすことができずにいました。相談中にずっと泣いていたことをよく覚えています。これほど深刻な被害を受けても声を出せないんです。

 背景知識がないので、あーだこーだ言うのは控える(個々人ごとに事情も違うだろうし、会社側の言い分もあるだろうし、受け入れやってるところの中にはちゃんとやっているところもあるんだろうと思うから)けれど、本当にこういうのって何とかならんもんなのかね。この弁護士さんも受け入れ農家相手の訴訟に関連して「どこの農家も経済的苦境や若者の労働力不足から、外国人単純労働者を受け入れたいという需要は理解できますし、それ自体責められることではありません。」と書いている。それはたぶん農家に限らず、受け入れ企業などでも同じことが言えるんだろう。とはいえ、だから「仕方ない」で済まされることでもないんじゃねーかと思われてならない。

 別段何が言いたかったわけではなくて、自分は知らなかった話なので、他にまだ知らない人もいるんじゃないかと思って引っぱってみただけだったりする。

 締まらなくてごめん。とりあえず弁護士の方には頑張っていただきたい。なぜかってそれはこんなのがまかり通るたび、俺の中の自分の国に対する評価が下がるからだ。生まれる場所は選べないんだから、まともなところに生まれて良かったって思いたい。もっと悲惨なところもあるんだろうけど、「そこよりマシで良かった」なんて後ろ向きの喜び方したくないわけで。
 裁判結果だけじゃなくて、外国人の受け入れシステム自体が改良されていって欲しい。当然時間はかかるだろうけど。

関連リンク:外国人研修生問題弁護士連絡会/外国人研修生実習生支援会