題名のない音楽会にイタコが出た朝

高木彬光の『黄金の鍵(amazon)』という本を読んでいたら、こんな記述にぶつかった。

あれはいつごろのことだったろうか、テレビの『題名のない音楽会』で、ベートーベンの恋人の名前が問題になったことがある。
 占星術だの、人相だの、占いの専門家が出て来てあれこれと議論をしたあとで、司会者が『それではベートーベン本人に聞いてみましょう』と言い出したのだが、それから画面にあらわれたのは、なんと青森恐山の『イタコ』と呼ばれる巫女だった。
 ベートーベンの霊魂は、ドイツ語ではなく津軽弁の強い日本語で話しはじめたが、結局この謎の『不滅の恋人』の名前はわからずじまいだった……

 なんですのん、それと検索してみたら、こちらのページに当時の新聞テレビ欄が記録されていた。こうある。

ベートーベン人生劇場 情痴編
20人もいたというベートーベンの恋人の本命は誰なのかを探り、さらに恋人達を通して彼の音楽の秘密を探知する。
恋人達の経歴を調べ、骨相学に詳しい高木彬光占星術の門馬寛明が本命を推理。さらに恐山の霊媒がベートーベンを呼び出し、彼に東北弁で本命のヒントを語らせる。

 日付は「1970.03.06」となっていた。いきなりどうして『題名のない音楽会』がと疑問だったのだが、先生、ご出演なさっていたんですね。「人相だの専門家」は自分のことか。
 残念ながら映像は発見できなかった。見られるものなら是非見てみたい。

 ところで、本書最後の作者後書には「この事件は昭和四十四年に起こったという想定である。したがって、小判などの古貨幣の値段を含めた諸物価は当時の標準によっていることをご承知いただきたい。」と書かれている。で、新たな疑問がむくむくと。

 昭和四十四年て一九六九年じゃね?