エラリー・クイーン 越前敏弥訳『レーン最後の事件』

レーン最後の事件 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-09-23
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 うっわー、面白かった。
 本書は『Xの悲劇(Amazon)』から始まるレーン四部作の最後を飾る作品。半年くらいまえに『Zの悲劇』を読んだ(感想)あと、買って本棚の肥やしにしていたのだった。いや、最後で面白くなるのはわかってるんだけど、そこへ至るまでが長いんだよね、クイーンて(個人の感想です)。でも四部作と言われているのに、最後の一冊だけ未読のままというのは、たとえ犯人が誰かだけ知っていたとしても据わりが悪いってことで読むことにしたんだけども、こんなに面白いとはまったく予想していなかった。

私立探偵サム元警視を訪れた奇妙な七色の髭の男。何百万ドルもの価値がある秘密に繋がる手がかりの入った封筒を預かってほしいというその依頼が、一同をかつてない悲劇へと導いていく。消えた警備員の謎、シェイクスピアの貴重な稀覯本すりかえ事件、不審な愛書家、そしてサムの美貌の娘ペイシェンスに危機が迫る時、元俳優のレーンの推理は…?!いよいよクライマックスを迎えるドルリー・レーン四部作、新訳完結編。

 あらすじはこんな感じ。七色の髪の男はサム元警視に封筒を預かって欲しいと依頼し、決められた日程で生存確認の電話をするから、もし電話がなかったらなかを検めるようにと言い残して去って行く。そのあと人捜しの依頼を受けて警備員の足取りを追うべく、彼の勤め先ブリタニック博物館(シリーズ探偵のドルリー・レーンはこの博物館の役員をしていてサムに便宜をはかり、のちには捜査に協力する)へ向かったサムは見学者の集団が行きと帰りで人数が違ったという話を聞いたりするうち、シェイクスピア稀覯本のすりかえ事件とぶつかり、警備員はその盗人を追いかけていったんではないかというふうに展開していくんだけど、この稀覯本のすり替え事件あたりからギアが上がっていく。持ち去られた稀覯本の代わりに事件発覚を遅らせるべく置いて行かれたのは、もっと価値の高いさらなる稀覯本だったのである。おまけに盗まれた本が返送されてきたりしていったいどうなっているのよと。そっからあとはもうずっとね、「えーそうなんのかー」ばっかりで、「これ、ほんとにクイーン作品なんだろか、途中経過が面白すぎるぞ」と何度考えたことか。だれるところが全然なくて先が気になって仕方ないというジャンル関係なしに面白いお話の条件が見事にクリアされた話の展開だった。

 四部作の最後とかそういうのを無視しても大当たりの一冊だった。そのうち再読しようと思う。

 なお、訳者あとがきには、

 この完結編について言えば、ドルリー・レーン氏が過去に解決した三つの大事件をひとつ残らず読んでいないと、その魅力は半分も味わえないだろう。

 とあるので、一応シリーズの前三作にもリンクしておく*1

Xの悲劇 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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角川グループパブリッシング 2009-01-24
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Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-09-25
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Zの悲劇 (角川文庫)
エラリー・クイーン 越前 敏弥

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角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25
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*1:個人的にはウィキペディアか何かで設定だけ抑えておけば充分楽しめるような気もするのだけど、まあ全部読んだほうが味わい深いのは間違いない。ただ、X〜Zのどれかで挫折した場合は、さっさと本作を読むべきだと思う。このシリーズで本作だけ先が気になる度合いが突出しているので、ほかのを放り出した人でもこれならいけると思うのである。

フィリップ・K・ディック 浅倉久志訳『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』

パーマー・エルドリッチの三つの聖痕
フィリップ K ディック 浅倉 久志

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早川書房 2013-02-28
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 なんとなく読んでみた。設定年代2016年(今年だ)。1965年から見た2016年は人類が太陽系の外まで足を伸ばし、火星には開拓団が送られ、金星には麻薬の畑が広がっていた。未来予知ができる男が朝起きると、なぜか隣に美女が寝ててって、なんとなく野崎まどの『know(感想)』を思い出すよな幕開け(そっから全然違う展開だったけど)と、未来の殺人事件を予知するところとクスリの効果で現実と似て違う世界をさまよって戻ってきたと思ったらまだ現実じゃなくてみたいな中盤の描写が印象的だった。タイトルに掲げられたパーマー・エルドリッチなる人物は自分的にはいまいち印象薄く対決的な盛り上がりはあまり感じなかった。

ダニエル・カーネマン 村井章子訳『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか(上下)』

ファスト&スロー (上)
ダニエル カーネマン 村井 章子

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早川書房 2012-11-22
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ファスト&スロー (下)
ダニエル カーネマン 村井 章子

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早川書房 2012-11-22
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 いや、これ、面白かった。どう面白かったかって話のまえにとりあえず内容紹介引用しとく。

整理整頓好きの青年が図書館司書である確率は高い? 30ドルを確実にもらうか、80%の確率で45ドルの方がよいか? はたしてあなたは合理的に正しい判断を行なっているか、本書の設問はそれを意識するきっかけとなる。人が判断エラーに陥るパターンや理由を、行動経済学認知心理学的実験で徹底解明。心理学者にしてノーベル経済学賞受賞の著者が、幸福の感じ方から投資家・起業家の心理までわかりやすく伝える。

 ついでにウィキペディアからだけど、著者の業績も引用しとく。

プロスペクト理論

プロスペクト理論(prospect theory)は、不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。この理論は、1979年、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって発展した。
ヒューリスティクスとバイアス

心理学におけるヒューリスティックは、人が複雑な問題解決等のために何らかの意思決定を行う際、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のことを指す。これらは経験に基づく為、経験則と同義で扱われる。判断に至る時間は早いが、必ずしもそれが正しいわけではなく、判断結果に一定の偏り(バイアス)を含んでいることが多い。ヒューリスティックの使用によって生まれている認識上の偏りを、認知バイアスと呼ぶ。
ダニエル・カーネマン、ポール・スロヴィック、エイモス・トベルスキー共著、『Judgment Under Uncertainty: Heuristics and Biases』、1982年、およびT・ギロヴィッチ、D・グリフィン、ダニエル・カーネマン共編、『Heuristics and biases: The psychology of intuitive jadgment』、2002年参照。

ピーク・エンドの法則

ピーク・エンドの法則(Peak-end rule)とは、ダニエル・カーネマンが1999年に発表した、あらゆる経験の快苦の記憶は、ほぼ完全にピーク時と終了時の快苦の度合いで決まるという法則のことである。

 はあ、そういう系の本ですね、人間が不合理な判断するってあれでしょと思った人はまったく正しく、そんな系の本である。なんだけども、「人間の不合理な判断」って言い方を著者は好まないとのこと。

合理性を一貫性として定義する以上、あらゆるものに一貫してこのルールを適用しなければならない。つまり限られた思考力しか持たない人にはとうてい実行できないような、論理規則を厳守しなければならない。この定義では、ふつうのまともな人は合理的にはなり得ない。だからといって、この人たちに不合理というレッテルを貼るべきではないだろう。不合理というのは強い意味を持つ言葉であり、衝動的、感情的、道理に対する頑固な抵抗といったものを想起させる。エイモスと私の研究は「人間の選択が不合理であることを示した」といった説明つきで紹介されることが多いが、そのたびに私はうんざりしたものだ。実際には私たちの研究が示したのは、合理的経済主体モデルではヒューマンをうまく記述できない、ということだけである。

 ここでヒューマンって書き方をしているのは、経済学が想定する合理的な判断しかしない人間が「エコン」と呼ばれてて、そんなやつはどこにもいないという話の流れがあるから。でそれにたいして、直感的に判断を下す速い思考(大抵はこれでうまくいくけれども、速い分さまざまな場合に体系的にエラーを起こす)と、遅い思考(遅い分ちゃんと考えるがなかなか作動しない)を持っているごく普通の人間のことをヒューマンと言っているわけ。

 で、なかに書かれていることの大半はググれば出てくるだろうからすっとばします。
 本書が類書(これとかをソースにしてざざっとまとめてくれた本やら、別の研究者による真面目な解説書とか)と違うところは、上の引用に出てきたエイモスの存在である。このエイモスさんことエイモス・トベルスキーは1996年に亡くなっているのだけども、プロスペクト理論の開発やらバイアスの発見やらをカーネマンと一緒に行ったパートナーだ。ということは上巻の冒頭で説明がある。で、これは自分たちがどうやってそういったバイアスを見つけたり理論を組みあげたかって話を実験の設定説明やら結果の解説やらと一緒に語っているので、超一流心理学者の青春グラフィティという色合いも浮かんでくる。そしてそこには大抵エイモスがいるのである。亡くなっているエイモスが。そのため、すべてのエピソードは亡くなった友人への挽歌のような色合いを怯えている(いや、表には欠片も出てこないんだけど、読むほうとしてはどうしてもそんな気分が生まれるって話で)。これが本書の個性だと思う。心理学の本に著者の個人的エピソードが出てくるのは経験上それほど珍しくないのだけど、片っぽが亡くなっていると明示されているせいで、それらのエピソードすべてがもうここにはない時代をどうしても想像させて、なんか著者の人生を垣間見たような気になる。この手の本で、こういう気分になったことはちょっと記憶にない。
 人間がどう不合理な判断をするのかってことに興味のある向きには、ほかの本読むよりこっちがいいよとちょっと言いたくなる感じの独特な温かさ(とも違うんだけど、なんて言ったらいいのやら)があって、読み出したときに想像したものとだいぶ違っていた。これはかなりいい本だと思う。

 ちなみに、こういう本を読むときの色気のひとつに、判断間違えそうな局面で正しい判断ができるようになるみたいな希望があるかと思うのだけど、その効果についてカーネマンは次のように述べている。

経験から言うと、システム1にものを教えても無駄である。私自身の直感的思考は、ささやかな改善(その大半は年齢によるものだ)を除き、相変わらず自信過剰、極端な予想、計画の錯誤に陥りやすい。その度合いは、この分野の研究を始める前と、じつはさして変わらないのである。私が進歩したのは、いかにもエラーが起こりそうな状況を認識する能力だけである。「この数字がアンカーになりそうだ」「問題のフレーミングを変えたら、この決定にはならないだろう」といった具合に。一方、自分が犯したエラーではなく、他人のエラーを認識することにかけては、大いに進歩したと思う。

 エラーが起こりそうな状況を認識する能力だけでも進歩すれば御の字と思っておくといいのかもしれない。最後の一文は真理過ぎて笑った。
 繰り返すけど、なかなかに面白くよい本だった。

C.W.ツェーラム村田数之亮訳『神・墓・学者』

神・墓・学者―考古学の物語 (上巻) (中公文庫)
C.W.ツェーラム 村田 数之亮

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中央公論社 1984-12-10
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神・墓・学者―考古学の物語 (下巻) (中公文庫)
C.W.ツェーラム 村田 数之亮

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中央公論社 1984-12-10
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 考古学のドラマチックエピソード集みたいな本。原著が最初に出たのは1949年で読んだ訳本は1984年に出ている。当然扱われている話題はその後いろいろ新しい事実とかが積まれているに違いないのだけれども、トロイ、ミケーネ、エジプト、シュメル、マヤ、アステカと各地のお話が一冊にまとまっているのは、いちばん最初のとっつきとしてはありがたい。以下目次。

上巻

下巻

  • III 塔の巻
    • 聖書に書いてある
    • ボッタ、ニネヴェを発見す
    • 楔形文字の解読
    • 例題の実験
    • ニムルド丘の下の宮殿
    • ジョージ・スミス、乾草の山に留針を探す
    • コルデヴァイをめぐる銃弾
    • エテメナンキ――バベルの塔
    • 一千年を生きた王たちと大洪水
  • IV 階段の巻
    • モンテスマ二世の宝
    • 首をはねられた文化
    • ティーヴンス氏、一つの町を買う
    • 間奏曲
    • 棄てられた都の秘密
    • 聖なる池への道
    • 森林と溶岩の下の階段
  • V いまだ書きえない巻
    • 古い国における新しい研究
  • 文献
  • 文庫版訳者あとがき

 印象に残ったところ抜き書き。(自分用メモ)

 われわれの経験するところによれば、不確かなことがいささかでも残っているかぎり、どうしても空論がはびこりやすいものである。だが空論と仮定とは区別する必要がある。仮定は、あらゆる学問の研究方法にともなうところのものだ。それは確実な結果からでて可能性をひらいていくのだが、その背後にはつねに疑問符が付されている。空論は、それに反して抑制がない。多くの場合、その出発点は必ずしも「確実なる」ものではなく、「望まれたる」ものだ。またその結論と称されるものは、つねに空想以外の何ものでもない。この空想というのは、夢の靴をはいて、形而上学とか、神秘論のまっ暗な森とか、誤って解釈されたピタゴラスカバラのきわめて不可思議な広野や迷路とかをさまよい歩くのだ。こういう空論が、われわれ二〇世紀の人間がつねに歓迎するあの論理と結びつくようにみえるとき、それは最も危険なものとなる。
(上巻 p.237)

ロバート・ルイス・スティーヴンソン夏来健次訳『ジキル博士とハイド氏』 

ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)
ロバート・ルイス スティーヴンスン 夏来 健次

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東京創元社 2001-08-31
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 昔一度読んで、割と印象がよかった本。『宝島(感想)』も面白かった印象があるので、スティーヴンソン好きなのかも*1。再読のきっかけはナボコフの『文学講義』(amazon)を読んだときに、本書の内容をほとんど忘れていることに気づいたこと。面白かった記憶はあるしそのうち再読して思い出そうと。
 であらすじは端折るけれども、読み返して感心したのは、これがちゃんとオチを知っていても楽しめる本になっているという点で、ハイドとジキルの関係を視点人物のアタスンは当初、恐喝の加害者と被害者だと考えて、ジキルを守らなくてはとか思う。ところがってオチを先に知っていると、こういうところが面白くてならない。あと、ジキルとハイドは二重人格的に解釈されているような気がするのだけども、今読んで連想するのはむしろ、ケヴィン・ダットンの『サイコパス 秘められた能力(感想)』に出てきた脳をいじってサイコパスに変身してみよう的なくだりで、ジキルとハイドの場合外見が大きく異なることで人格の変異を表していたいたのだが、今同じような話が書かれたら、そんなことはしなくても脳の話してれば説得力があるかもしれないと感じた。実際、ハイドはサイコパスっぽいし、ダットンの本には一流の医師、弁護士、スパイ、トレーダーなどにもサイコパス的な心理の反応が見られるというようなことが書いてあったので、ジキルの言っていることは現代でも十分通用しそう。
 あと昔読んだときには、にわかに楽しくなってきやがったと前のめりになった中盤の殺人事件があんな適当に処理されていたのにも軽く驚いたり。動機とか現代的すぎて唖然となった(だから忘れてたんだな、きっと)。
 そんなわけで大変楽しく再読できた。また十年後くらいに読み返したい。

*1:『宝島』の感想を読み返したら、『新アラビア夜話(感想)』が面白かったから読んだって書いてあるので、今のところ外れなしの模様。

D・M・ディヴァイン山田蘭訳『三本の緑の小壜』

三本の緑の小壜 (創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン 山田 蘭

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東京創元社 2011-10-28
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 まずあらすじ。

英国北部のごく平凡な町で、13歳の少女ジャニスが姿を消した。捜索もむなしく、ジャニスはゴルフ場で全裸死体となって発見される。なぜほかの少女ではなく、ジャニスだけが毒牙にかかったのか? 殺人鬼はこの町のどこに潜んでいるのか? 町の診療所に勤める若き医師ケンダルが有力容疑者として浮上するが……。『厄災の紳士』『ウォリス家の殺人』などで各ミステリ・ベスト10を席巻した本格ミステリの巧手、期待の訳しおろし作!

 長編ミステリーらしい長編ミステリー(定義は不明)が読みたいと思ったときにほぼ自動的に「じゃあディヴァイン読もう」って答えが出てきたのでアマゾンでポチって読んだ。
 ディヴァイン読んだのはこれで5冊目なんだけども、いつも安定して面白い。いや、ほんとに、変な派手さとかどぎつさとかないのに、しっかり「どうなるんだろう」と思わせて、場面場面もちゃんと機能してて素晴らしいという印象。
 今回は全5部立てで、各部ごとに視点人物が違う(語り手3人)のだけど、ちゃんと視点人物ごとに人物評とか違っていてそれも好ましかった。
 犯人の動機が「おいおい、ここが使われたら、おれの大嫌いなあの作品と同じじゃないか」と危惧したとこどんぴしゃりだったのだけど、ほかの部分との兼ね合いが違っていたので、それほど引っかからず、モチーフというのは料理の仕方次第で印象が変わるんだなあということを知った。
 この人、デビューしたときにクリスティーが褒めたらしいのに、いまいち話題にならないというか、言及されることが少ない気がするんだけども、もっと読まれていい作家なんじゃないかと思われてならない。書きぶりとか、スマートに書くとはこういうことだ(別の作家のキャッチコピーだけど)って感じがする。次は何を読もうかな。

『虎と月』

虎と月 (文春文庫)
柳 広司

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文藝春秋 2014-01-04
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山月記青空文庫)』を踏まえた作品で、虎になった李徴の息子が語り手。山月記の時代から10年後が舞台。息子は父親のことを知るため、旅に出る。謎は「いったい何があったのか」かな。ページ数も短いので大仕掛けな話ではないものの、柳広司のエッセンスが詰まった作品という印象。『ジョーカー・ゲーム感想)』のシリーズよりずっとらしいと思った。あーでももしかすると、ストレートにボーイ・ミーツ・ガールやってるのは珍しいかもしれない。