今週のニューズウィークから

 パラパラ見たら、なんか面白い記事がいっぱい。ちょっくらメモ。

イスラエルのアラブ人は敵か
 2月10日の選挙結果を受けて書かれた記事。極右政党「わが家イスラエル」のアビグドル・リーベルマン党首が国内のアラブ系住民を非難してこんなことを言っているんだとか。

ユダヤ国家への忠誠の誓いと兵役の義務を果たしていないという理由で市民権を剥奪する可能性を示唆している(アラブ系住民は兵役を免除されている)。

「アラブとイスラエルインスタントストア)」によると、このアラブ人の兵役免除は、むしろアラブ人は信用できないから兵役に就かせないというニュアンスの制度だったらしいのだが、国民のみなさんはどう受け取っているんだろう。(追記:芝生瑞和「パレスチナamazon)」によると、ユダヤ人の中でも、「超正統派」と呼ばれる宗派の人々は兵役が免除されているそうだ。もし兵役につかないことを理由に市民権を剥奪するなら、この人たちの市民権はどう扱われるんだろう。)。その横のページには、

・笑うしかない選挙結果

 という記事が載っていて、このリーベルマンをダース・ベイダーになぞらえて笑いにしている番組がある話が紹介されていた。ちなみに選挙に勝ったのは中道政党のカディマ。誰もこの党が第一党になるとは予想していなかったと記事にある。雑誌冒頭には左派・中道・右派すべてがシーソーの右側に並んでいる風刺漫画が描かれていた。

・ある若者の死がえぐり出した闇
 映画「パリ・テキサス」の舞台で起きた黒人殺害事件のルポ。犯人として起訴されているのは被害者の友人だった白人ふたり。ふたりは犯行を否定している。南部テキサス州のパリスではこの事件を切っ掛けに人種対立が表に出て、結果KKKやら新ブラックパンサーやらも乗りこんできて、困ったことになっているらしい。なんでも2年前に、ある黒人少女が教員を突き飛ばして少年院に7年収容されることになったのに、同時期に白人生徒がやった放火に対しては保護観察処分で済んでいたなんて話もあったそうで、なかなかハードな地域に思われた。

・有名人だって一攫千金

 一般人が参加するリアリティー番組に俳優で脚本家のマイク・ホワイトが父親のメル・ホワイトと出演。メルは同性愛者の権利擁護を掲げる活動家で元福音派の牧師。記事はインタビューの形。

メル 同性愛者であることが注目されるなら、「同性愛者はいい親になれない」という神話を崩したい。いまだに同性愛者が子供をもつことに反対する人がいるのは悲しいことだ。同性愛者だって素晴らしい親になれる、というモデルになれればうれしい。

 あんまり酷い嫌がらせなんかを受けないといいな。ちなみに別ページでは同性婚に反対する福音派の牧師のエッセイも載っている。タイトルは「突き上げた拳を収めて話し合おう」

深く反目し合っていても対話で解決した問題はこれまでにいくつもある。だから今こそ声を上げよう。優しく。「話し合いませんか?」

 ふたつを読み比べると、妥協の余地のない話をそれでも理性によって妥協のよちのあるものにしていこうとする姿勢だけは持ち続けようとする意志が感じられる。もちろんそのような我慢強い人ばかりではないだろうけど。反対派からしてみれば、半世紀前には犯罪行為だったというイメージもあるだろう。ただ、「ネヴァーランドの女王(Amazon)」の紹介記事なんかを見ると、ヨーロッパの方では、1920年代には同性愛に対しても社会はそのあとよりは寛大だったようだ。アメリカがどうだったのかは分からないけれども。何が言いたいのかというと、この人たちの努力が実を結ぶ可能性もゼロじゃないだろうということだ。

・ただ靴下をはき替えたかった
 ハドソン川に旅客機を不時着させたサレンバーガー機長の手記。自分だけがヒーロー扱いなのに違和感を唱える(五人の乗員全員がベストをつくしたのだと機長は言いたい)前半から読ませる。英雄という冠がどうしてもしっくりこなかったと機長は言う。

「英雄」とは人命救助のために炎が燃え盛るビルの中に飛び込む決意をするような人のこと。私の場合は違う。事態が私たちの上に降りかかってきたのだ。
 私は自分で選んでああいう行動を取ったわけではない。だから、誰かが私に感謝してくれたときはありがたく受け止めるが、自分に対する謝辞とは考えないようにしようと最初は思っていた。

 しかし時間が経つに従って、事件やイメージのギャップに対する考えが変わってきたと機長は言う。人々が「希望を感じたいと切に願っていたこと」に思い至り、みんなが「自分が信じてきた価値観や理想がまだ滅びていないと、人々は再確認したかったのだ」と思うようになった。機長はどうやらその希望や理想のシンボルに祭り上げられることを引き受ける決意をしたようだ。だから次のようなメッセージを投げかける。

飛行機は突然言うことを聞かなくなったが、それでも機内の全員の命を救うよう努めることが自分たちの義務だと思っていた。私たちは決してあきらめなかった。
 同じように、失業や住宅の差し押さえなどの危機に直面している人たちもあきらめないでほしい。どんなに状況が不利で、与えられた時間が乏しくても、打てる手はどこかにあるはず。どんな苦境にも脱出ルートはきっと見つかる。

 危機を前に決断するのがヒーローだと機長は言っているけれど、ヒーローの条件は役割を引き受けることだとキャンベル先生も言っている。危機は役割をはっきり示す道具にすぎない。ヒーローになることを引き受けたこの人は、やはりヒーローと呼ばれるに値すると俺は思う。
 他にオバマ大統領の動向や経済対策(アメリカはどうしたって社会主義っぽい社会にひとまずなるしかないだろという論調)の話。ウィル・スミスへのインタビューやマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」が発表50年なんて話もあって盛りだくさんだった。

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2009年 2/25号 [雑誌]

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