「焼跡のイエス・善財」

焼跡のイエス・善財 (講談社文芸文庫)
石川 淳

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講談社 2006-11-11
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 澁澤龍彦の「偏愛的作家論」を読んで以来、石川淳はなんとなく気になり続けている作家だったのだが、まとめて読んだのは今回が初*1。「暗黒のメルヘン」にも収録されていた「山桜」を皮切りに「マルスの歌」「焼跡のイエス」「かよい小町」「処女懐胎」「善財」の順に収められているが、個人的には「マルスの歌」と「焼跡のイエス」「かよい小町」の三作が面白かった。解説は小難しいことを言っているが、突拍子のなさを楽しめばいいんじゃねえかと思う。
 例えば、「マルスの歌」で姉に死なれたことをひとしきり嘆いたオビイのこんな台詞、

よーし、オビイ、もうそのこと考えないぞ

 例えば「焼跡のイエス」の浮浪児に襲われた語り手の、相手にイエスの似姿を見てしまった時のコメント、

すでにして、敵はイエスである。

 例えば、「かよい小町」でひとしきり事が終わってから芸者にライ病の兆候を見て取った主人公の回心、

道は明白に確実にたった一つしかない。ただちに染香と結婚してカトリックに帰依するの一事あるのみである。

 どれもその突拍子のなさゆえに、大変ウケた。他の作品にも手を出してみようと思う。まずは芥川賞を取った「普賢」だろうか。
追記2015/06/22
キンドル版が出ていた。確認時の価格は1134円。
焼跡のイエス 善財 (講談社文芸文庫)
石川淳

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*1:デビュー作「佳人」の感想はこちら