スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ7『WANDERER』から『ONE NIGHT GIGOLO』(あるいはみなさんのおかげです)まで。


チェッカーズの音楽とその時代
の読書メモ第7回。
前回。
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『WANDERER』はマサハルが作曲した初のシングル曲で、本書はこのくだりで『NANA』以降のシングル曲の作曲担当比率を挙げている。

・ナオユキ(藤井尚之):8曲(42%)
・マサハル(鶴久政治):7曲(37%)
・ユウジ(大土井裕二):2曲(11%)
トオル(武内亨):1曲(5%)
・「THE CHECKERS」名義:1曲(5%)

 トオル作曲のシングル曲って『ONE NIGHT GIGOLO』だけだったのか! と軽く驚いた。
 スージーさんのご意見はこう。

 比率的にはナオユキとマサハルが2トップとなっていて、微差でナオユキの方が高くなるが、作品の質に話を移すと個人的には、マサハル作品の方に軍配を上げたい。

 ただし、『WANDERER』は「まだ習作レベルというか、のちのマサハル作品に感じられる、異常にポップな輝きを感じることは出来ない。曲として、何だかギクシャクしている感じがするのだ。」と仰有っているが、このギクシャクした感じってのはAメロからBメロへ行くところのことだろうか、それだとすげえわかるわかるって思うんだけど。あれ? ってなるよね。「正月に曲出ししたときに保留にしといた曲が何曲かあって、そのうち2曲のいいとこだけを合体させた曲」というマサハル本人の弁が引用されていて、「ああ、そうだったのか」と納得した。

何よりタイトル『WANDERER』の意味がわからなかったという記憶がある。

 これもすげえわかる。最初wanderとwonderごっちゃにして不思議な人だと思ってた。正直、十代で聴いたときはあんまりいい印象を持っていなかった(オリコンの1位を取った最後の曲なんだけど、ほかの曲のほうが格好良くない? という印象が強かった)んだけども、2017-2018年カウントダウンで生で聴いたらよかった。
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これの25:54くらいからのやつ。

で、話は『Blue Rain』へ。スージーさんは「チェッカーズお得意のロッカバラード」と書いてるんだけど、自分の印象はいつ聴いても「演歌」だったりする。声が遠いって印象もあったなあ。今はシングル全部列べて流しているから、『Blue Rain』もちょっと毛色が違うアクセントみたいな聴き方になって、それなりに気持ちよく聴けるんだけど、これをシングルにした狙いはよくわからなかったなあ。脱アイドル路線の暴走だろうか。

 そして、本書の全コメントのなかで最高傑作のウルトラCになっているのが次の『ONE NIGHT GIGOLO』。

 印象度だけで言えば、《I Love you, SAYONARA》と並んで、「第2期チェッカーズ」を代表する曲だと思う。

 って言ってるのに、曲の説明そっちのけで、この曲をネタにした『とんねるずのみなさんのおかげです』のコントの解説を丁寧にやって、

 チェッカーズとんねるずのリズム感がぴったりと合っている。そのリズム感が、同じく当時全盛期を迎えていた新宿河田町のフジテレビからの電波に乗って、日本中に響いている。そして、日本中の若者がそれを見て、笑い、歌い、乗っている。もちろん私も、その中のひとりだった。
 この曲のイントロから見えてくるのは、そんな1988年の風景である。

 ってしめちゃうんだもん。
 本書の感想でも書いたんだけど、このスタンスじゃなきゃこの曲の十全な理解はできないので、この一見職場放棄的な展開は愚直でけれんのないアプローチだと思う。ただ、どうせ曲から離れるなら、サビのところでボーカル三人がさりげなーくステップ揃えてるとことかも言及してほしかった。そういえば、『涙のリクエスト』にしても『哀しくてジェラシー』にしても歌ってるときの振りには全然言及がなかったな。『ジェラシー』の「おっとことおんなはすーれーちがーいー」のとこのあれとか、おれの同級生とかでも覚えてるくらいの印象があったんだけど。
 ちなみに私、トップテンだかベストテンだかで初めてチェッカーズの実物を見た際、歌前のトークで「フミヤの髪型変遷史」みたいのが流れ、その最後にこの曲のサビの最後「♪孤独を消してくれ~~」ってとこだけ見て、「何この曲格好いい」と一目惚れをしたのでした。シングル買い出したときに「あの曲これかなあ」(当時はyoutubeがなかったのよ)と、再生しては外すこと数度、とうとう辿り着いたときには「まさかみなさんのあれだったとは」と少々複雑な気持ちになりました。大好きな曲です、はい。上に貼ったカウントダウンで生で聴いたときには感激しました。そして、会場の皆様のこの曲大好きさ爆発した一糸乱れぬ合いの手なんかにも感激しました。2018-2019もサックスの音が鳴り響いたところで「来たあああー」となったんだけど、そこに憲さんあらわれて、まさかのコント再現となり、「これが生で見られる日が来るとは想像してなかった」と思いつつも、「え、歌わないの?」と少ししょんぼりしたのもまだまだ記憶に新しいままです。

追記:読書メモ完結。全十三回。以下目次

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