スージー鈴木『チェッカーズの音楽とその時代』読書メモ1 タイトルのメッセージを妄想してみた

 『チェッカーズの音楽とその時代』(amazon)を読んだ。2019年に出る、チェッカーズのシングル総まくり解説本。アマゾンでもうすぐ出ますみたいの見たときは、なぜに? なぜに? うれしーーー。ってなった。で、最近近所に気に入ってる本屋もあるので、アマゾンではポチらずに取り寄せをお願いし、ただただ待っていたのだが、昨日ようやく入荷のお知らせをもらったので、喜び勇んで入手してざざざざっと読んでみた。読書感想はいずれまとめるつもりだけども、この記事
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でも書いたように、最初のブームに間に合わなかった後発組だったのもあって、「あの曲はここがいい」の「この曲はどーのこーの」とチェッカーズできゃっきゃうふふできた記憶がほとんどない身としては、人様の感想を見るたびに、なんかコメントとか入れて遅ればせのきゃっきゃうふふをしたいという欲求もありつつ、文字で知らない人とそれやって火傷せずに終わるとも思えないって経験則もあったりするもんだから、この全シングル解説に書いてあることに「えー」とか「わかるー」とかくちばし挟んで今更の追体験をやってみたくなってしまったのだった。そんなわけで読書メモ1です。2以降もあるんじゃないかと。ってことでまずはギザギザハートの子守唄……ではなくて、「はじめに」から。
 書いてあるのは本書執筆に至る流れと中身について。発売日はチェッカーズが初めて『ザ・ベストテン』で1位を獲得した3月29日に合わせた。BS12トゥエルビの音楽番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』でチェッカーズ特集をやってマサハルとユウジ(敬称略以下同じ)について語ったあと、音楽サイト『リマインダー』主催のイベントでマサハルと対談、それを聞きに来ていたのが本書の編集者で原稿執筆依頼になったのだとか。でタイトルの由来。

 本タイトルを分解する。タイトルの前半=「チェッカーズの音楽」は、これまで、意外なほどに語られなかった彼らの音楽そのものと、しっかり向き合いたいという意志を示している。今一度シングル曲を丹念に聴きこみ、その魅力の幅・高さ・奥行きを正確に測定するという、けれん味のないアプローチを心がけた。

 タイトルの後半「その時代」は、あの80年代を、でいるだけリアルに描き出したいという目論見を表す。具体的には、私のパーソナルヒストリーの中にチェッカーズを位置づけるという、少々差し出がましい手法を用いた。

 で、本書全体を見たうえで考えるに「はじめに」最大の山場フレーズが来る。

さて。先に白状すれば、私は当時、チェッカーズの強烈なファンではなかった。チェッカーズよりも、ビートルズレッド・ツェッペリンはっぴいえんどなどの方を好んで聴いている若者だった。

 でも、そうでなければ見えて来なかったものもあると思っている。ユウジのベースの向こう側にポール・マッカートニーを、マサハルのメロディの向こう側に、ロイ・オービソンを、そしてフミヤのボーカルの向こう側に沢田研二を見据えることが出来たのは、リスナーとして色んな回り道をして来たからという自負もある。

 なんでここが山場なのかと言いますと、すっげえ面白いことに、チェッカーズに熱狂した思い出ってのは全然書かれていないのね、各曲に対してリアルタイムで感じた不満と聴き直してみて気づいた美点みたいな構成で書かれたところばっかりと言ってもいいくらいなんだけど、リアルタイムでの感想のほとんどが「期待してたのと違った」にまとめられるわけ。なかには文字面読んで、この人チェッカーズ好きじゃないんじゃない? とか、仕事で分析しただけなんじゃない? とか、あとになってやっといいところがわかったんだね、とか、思いそうなんだけど、おれとしては、これがさあ、すっげえわかるんだわ(笑)まさにまさに、そういう感想になるバンドですよね、チェッカーズってってなもんで。自分もシングル集め出したときに、割と頻繁に今言語化するなら「物足りない」って印象を持ったものだった(というか、一発目から「これはいい!」って思ったの、ミセスマーメイドとブルムーンストーンくらいじゃないかなあ、後期だと)。でもぼやきつつ聴き続けちゃうところが楽曲のぱっと見じゃ分からない魅力というか、魔力というか、実力というか。

そっから考えるにスージーさん、リアルタイムでもかなりチェッカーズ好きだったんじゃないかと思うのね。ほぼすべての曲にリアルタイムでの印象が書かれているし、生まれて初めて買ったシングルCDがJim&Janeの伝説だって書いてあるし、さよならをもう一度を聴いて「これはチェッカーズ、長くないぞ」と思ったとも書いてあるし。なのに、どこにもハマったとか、持ってかれたとか書いてないのはなぜかと考えるに、より魅力を感じたほかのアーティストがいたというのはもちろんほんとにあったんだろうけど、歌番組全盛だったこともあって、作品買わなくてもいつも視界の端にチェッカーズがいたからなんだろうというのが、作者より10歳下のおれの予想。あともう一個の予想として、やっぱりあれですよ、スーパーアイドルグループで出たグループなんで、強烈なファンだったと自覚するのが照れくさいってのもあるかも。その辺、リアルタイムじゃなかったおれにはよくわからない文脈があるのかもとも思った。いやだって、そもそも、強烈なファンだった時期もなく、こんな本出します? 楽曲分析なら出すかもしれないけどさ、そこにパーソナルヒストリー絡めて語るんだよ? というわけで、このタイトルの命名は、著者の「あんま大きい声じゃ言いたくないからその辺汲んでね」ってメッセージも籠もってる気がするのだった。

予定では次回は曲の解説読みながらきゃっきゃうふふ(独り相撲)するつもりです。
追記:先に感想書いた。
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追記:読書メモ完結。全十三回。以下目次

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