評論・エッセイ・ノンフィクション

佐藤卓己 輿論と世論―日本的民意の系譜学

輿論と世論という言葉は現在、同じように「よろん」と読まれる。これは戦後の漢字制限で「輿」の字が使えなくなったことに端を発する現象で、本来「輿論」が「よろん」と読まれ、「世論」は「せろん」と読まれ、使い分けがされていた。1888年発行の「漢英対…

Joseph Campbell Myths to Live by

スター・ウォーズの作劇にも影響を与えた神話学の泰斗が、50年代から70年代にかけて行った講演をもとにした本。比較神話学・比較宗教学の観点からあれこれのトピックを分析したり、神話入門的な話があったりと内容は雑多。 目次はこんな感じ。 Foreword John…

大塚英志+東浩紀 リアルのゆくえ

大塚英志と東浩紀が2001年から2008年までのあいだに行った4回の対談を収めたもの。「おたく/オタクはどう生きるか」ってサブタイトルで損をしてるんじゃないかと思われる。公民とか政治とかに関しての部分は別段オタクとか関係なかったように見え…

水村美苗 日本語が亡びるとき

あっちやこっちで話題の書。 この本は今、すべての日本人が読むべき本だと思う。「すべての」と言えば言いすぎであれば、知的生産を志す人、あるいは勉学途上の中学生、高校生、大学生、大学院生(専門はいっさい問わない)、これから先言葉で何かを表現したい…

野口悠紀雄続「超」整理法・時間編

このあいだ来年度版が発売になった「超」整理手帳というのが、どう便利なのかイマイチ分からず、これでも読めば理解できるだろうかと、ざっと眼を通してみた。知ってる人には馬鹿馬鹿しいような説明を入れると「超」整理手帳というのは、ジャバラ型の手帳で…

万年筆の印象と図解カタログ

丸善が明治四十五年に出した販売促進カタログ(なんだろなあ、たぶん)。夏目漱石の「余と万年筆(青空文庫)(感想)」も収録されている。図書館で適当に検索していたら復刻版があったので借り出して読んでみた。 目次はこんな感じ。余と万年筆/夏目漱石(…

森山卓郎『表現を味わうための日本語文法』

以前「外国語として出会う日本語(感想)」が割と面白かったので、シリーズの他の奴(作者は別の人)を読んでみた。今回のは文学的な表現に対して文法的にアプローチしてみようというもの。取り上げられるのは、例えば「馬鹿に」という副詞で、説明はこんな…

保坂和志『小説の誕生』

小説の誕生保坂 和志 新潮社 2006-09-28売り上げランキング : 23114おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 「新潮」の「小説をめぐって」という連載をまとめた第2弾。連載はまだ継続中らしく、これより前の部分は「小説の自由」(amazon)というタイト…

Laurie Bauer Peter Trudgill『 Lunguage Myths』

Language MythsLaurie Bauer Peter Trudgill Penguin USA (P) 1999-09売り上げランキング : 9641おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 編集者のLaurie BauerとPeter Trudgillによれば、この言葉を巡るエッセイ集は「専門家は一般人向けの本を書くのが…

小林ミナ『外国語として出会う日本語』

外国語として出会う日本語 (もっと知りたい! 日本語(第II期))小林 ミナ 岩波書店 2007-03売り上げランキング : 190959Amazonで詳しく見る by G-Tools 日本語学習者の質問や誤用を足がかりに日本語を見つめ直そうという本。 外国人向けの日本語文法は、学校文…

棚橋光男『後白河法皇』

後白河法皇 (講談社学術文庫)棚橋 光男 講談社 2006-08-11売り上げランキング : 211270Amazonで詳しく見る by G-Tools「中世日本の予言書―〈未来記〉を読む」(感想)で、平安末期から鎌倉初期にちょっと興味を覚えたので読んでみる。とはいえ途中あれこれあ…

鈴木貞美『新潮日本文学アルバム65 石川淳』

石川淳 (新潮日本文学アルバム)鈴木 貞美 新潮社 1995-02売り上げランキング : 251947おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 鈴木貞美は日本文学史の書き換えを唱えている学者で、西洋思想の受容に儒教道徳が一役買ったとか、1920年代モダニズムの再評…

柳瀬尚紀『日本語は天才である』

日本語は天才である柳瀬 尚紀 新潮社 2007-02-24売り上げランキング : 2691Amazonで詳しく見る by G-Tools 楽しみにしていた柳瀬尚紀の新刊。トリビアは増えたけど、新たな試みはこれといってなく、肩すかしを食った気分。他の本を読んでいればこれ読む必要…

小峯和明『中世日本の予言書―〈未来記〉を読む』

中世日本の予言書―“未来記”を読む (岩波新書)小峯 和明 岩波書店 2007-01売り上げランキング : 11759おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 「邪馬台詩」と「聖徳太子未来記」を中心に中世から近世において未来記(予言書)がどのように成立し、どのよ…

内田樹『私家版・ユダヤ文化論』

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)内田 樹 文藝春秋 2006-07売り上げランキング : 19805おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools PCトラブルの衝撃で、読んだことを忘れそうになったんだけど、覚えてることだけでもメモしておこう。なかなか面白かった…

内木場努『「こだわり」の英語語法研究』

「こだわり」の英語語法研究内木場 努 開拓社 2004-10-20売り上げランキング : 132772おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 参考書と研究書の違いは「こうなります」と書くか「なぜこうなるかというとこうだからです」と書くかの違いにあると思われる…

池上嘉彦『ふしぎなことば ことばのふしぎ』

ふしぎなことば ことばのふしぎ (ちくまプリマーブックス)池上 嘉彦 筑摩書房 1987-05売り上げランキング : 127909おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 「ことばの宇宙」誌に1984年から二年間にわたって連載されたものをもとにした本で、なぞなぞや…

久我勝利『知の分類史―常識としての博物学』

知の分類史―常識としての博物学 (中公新書ラクレ 236)久我 勝利 中央公論新社 2007-01売り上げランキング : 22310おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 著者が違えば面白かったであろう本。 体系化することと分類することは表裏一体の知的操作なので…

松坂忠則『国語国字論争 ■復古主義への反論■』

国語国字論争 (1962年)松坂 忠則 新興出版社 1962売り上げランキング : 1986344Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:B000JALBI6 1962年刊行。 昭和三十六年(一九六一)三月二十二日に、国語審議会の総会が開かれた。この席上で、五人の委員が、これまでの国…

別宮貞徳『実践翻訳の技術』

さらば学校英語 実践翻訳の技術 (ちくま学芸文庫)別宮 貞徳筑摩書房 2006-12売り上げランキング : 60335おすすめ平均 Amazonで詳しく見るasin:4480090282: by G-Tools 2006年刊行。ベースになっているのは「翻訳の初歩」という四半世紀前の本だが4割ほどは…

ミル山岡洋一『自由論』

自由論 (光文社古典新訳文庫)ミル 山岡 洋一 光文社 2006-12-07売り上げランキング : 273388Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:4334751199 名前は知っていても読んだことがない本に手を出すきっかけとしては、海外作品なら新訳というのがひとつの機会になる…

中原道喜『誤訳の講造』

誤訳の構造中原 道喜 聖文新社 2003-04売り上げランキング : 29728Amazonで詳しく見る by G-Toolsasin:4792217083 著者は基礎英文法問題精講(amazon)を書いた人。本書も帯に、 明快な文法的・語法的解明を通して誤訳の謎解きを楽しみながら,英文の正しい…

礫川全次『サンカと三角寛 消えた漂泊民をめぐる謎』

サンカと三角寛(みすみかん) 消えた漂泊民をめぐる謎 (平凡社新書)礫川 全次 平凡社 2005-10-11売り上げランキング : 543008Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4582852947 結局サンカがなんなのかはハッキリしないらしい。説教強盗もサンカのひとりらしい。…

伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ伊藤 剛 NTT出版 2005-09-27売り上げランキング : 345681Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4757141297 たけくまメモの記事で知り、購入。理由はタイトル。内容紹介やら何やらはリンク先の記事を読んでもらっ…

鈴木邦男 森達也 斎藤貴男『言論統制列島』

言論統制列島 誰もいわなかった右翼と左翼森 達也 鈴木 邦男 斎藤 貴男 講談社 2005-06-28売り上げランキング : 224496Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4062129779 管理社会に警鐘を鳴らし、時流に異を唱える鼎談本。 言っている内容を正しい間違っている…

芹沢一也『狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』

狂気と犯罪 (講談社+α新書)芹沢 一也 講談社 2005-01-21売り上げランキング : 487393Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4062722984 明治から平成にいたる精神障害者の扱われ方の歴史。エキサイトのインタビューを読んで購入した。日本に輸入された精神医学…

佐藤卓己『言論統制 情報官・鈴木庫三と国防国家』

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)佐藤 卓己 中央公論新社 2004-08売り上げランキング : 189867Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4121017595 本書がスポットライトを当てる鈴木庫三という人物は戦前の言論統制を担っていた人物。なの…

佐藤卓己『八月十五日の神話 ――終戦記念日のメディア学』

追記7/31:こちらで著者による解題めいた記事が読める。 八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま新書 (544)佐藤 卓己 筑摩書房 2005-07-06売り上げランキング : 298780Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4480062440 八月十五日が来るたび、先…

大山誠一『〈聖徳太子〉の誕生』

「聖徳太子」の誕生 (歴史文化ライブラリー)大山 誠一吉川弘文館 1999-04売り上げランキング : 288041おすすめ平均 Amazonで詳しく見るisbn:4642054650 by G-Tools 「聖徳太子」という存在が虚構であることを論証する本。前半の史料批判に関しては頷かされる…

森博達『日本書紀の謎を解く 述作者は誰か』

日本書紀の謎を解く―述作者は誰か (中公新書)森 博達 中央公論新社 1999-10売り上げランキング : 79125Amazonで詳しく見る by G-Toolsisbn:4121015029 面白かったーー! 七二〇年に完成した日本書紀全三十巻は、わが国最初の正史である。その記述に用いられ…