国内

戯作・誕生殺人事件

『仮題・中学殺人事件(感想)』に始まるスーパーとポテトのシリーズ、まさかの完結編。 「まさかの」と書いたのは『本格・結婚殺人事件』(読めてない……)でシリーズが終わるものと思っていたから。著者ホームページでもう一本やるというコメント見たときは…

赤衣丸歩郎 仮面のメイドガイ1・2・3・4・5

古本屋でぼんやり棚を見ていたら、『仮面のメイドガイ』なる文字列が眼に飛びこんできた。なんだそのやりたい放題な感じは、とものすごいインパクトだったので、手に取ってパラパラめくった。大昔の漫画かと思うほど、ごちゃごちゃした画面になんとも鬼気迫…

大倉崇裕『福家警部補の挨拶』

福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)大倉 崇裕 東京創元社 2008-12売り上げランキング : 20188Amazonで詳しく見る asin:4488470025 by G-Tools なんかの弾みでamazonの商品ページに辿り着き、レビューを見たら「コロンボ」「コロンボ」とみんな言っているので、…

瀬名秀明・芦辺拓・田中啓文・辻真先『鉄人28号THE NOVELS』

鉄人28号 THE NOVELS (小学館クリエイティブ単行本)横山光輝 辻真先 瀬名秀明 芦辺拓 田中啓文 小学館 2012-11-15売り上げランキング : 434411Amazonで詳しく見る by G-Tools 日本SF作家クラブ創立50周年記念出版作品。帯には、「4人の作家が描く、鉄人28号…

岡田尊司『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)岡田 尊司 光文社 2011-09-16売り上げランキング : 763Amazonで詳しく見る by G-Tools 昔、高橋源一郎が「読んでいて色々なことを連想するのがいい本だ(大意)」と言うようなことをどこかで書いていたように…

蓮見あつき『Kindle自己出版』

キンドル・ストアのオープン以来、ちょっと気になっているKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)。以前内容をなんとなく見ていたら、七面倒くさそうに思えたのがアメリカのIRSへの申請だった。それをしないと向こうでも源泉徴収されるらしいのだが、…

久楽健太『アルファマン・リターンズ』

アルファマン・リターンズ久楽 健太 講談社 2012-11-27売り上げランキング : 264667Amazonで詳しく見る by G-Tools 所用で本屋に行って、表紙に持ってかれた結果、購入。そのまま全部一気に読んでしまった。間違いなくガキの頃に刷り込まれたフェティシズム…

宮内悠介「星間野球」

雑誌『小説野生時代』最新号の別冊付録『野生時代読切文庫』所収作品。 著者は昨年デビュー作の連作短編集『盤上の夜(amazon)』がいきなり直木賞候補になった人*1。この本は囲碁やらチェッカーやら麻雀やらチャトランガやら将棋やらといった盤上遊戯…

ジョーカー・ゲーム

戦前日本を舞台にスパイ養成学校「D機関」の面々がさまざまな任務を遂行していく連作短編集。表題作のほか、イギリス総領事がスパイかどうかを探る「幽霊」、ロンドンを舞台とする脱出劇「ロビンソン」、上海の抗日テロを背景に据えた「魔都」、東京でドイ…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

やっと読めた。ハードカバー版の分厚さ見てかなりたじろいでいたのだが、文庫になったときに書きだし見たらじつに格好良く、これなら読みきれるんじゃなかろうかと手に取った。以下、そのじつにかっけえ書きだし。 今とここで表す現在地点がどこでもない場所…

有栖川有栖『女王国の城(上)(下)』

ちょっと遠出するかもしれん。そう言ってキャンパスに姿を見せなくなった、われら英都大学推理小説研究会の部長、江神さん。向かった先は〈女王〉が統べる聖地らしい。場所が場所だけに心配が募る。週刊誌の記事で下調べをし、借りた車で駆けつける――奇しく…

田中啓文『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』

なんで読もうと思ったかを説明するには、まずジャック・リッチーの傑作短編集「クライム・マシン (Amazon)」の話から始めねばならない。読んだ人にはいわずもがな、読んでない人には噓くささすら感じられるだろうが、この短編集は素晴らしい。言うなればシン…

米澤穂信原作 山崎風愛構成 おみおみ作画 夏期限定 トロピカルパフェ事件

小山内さんは、マイ・オールタイム・ベスト・メロメロ・ヒロインである*1。そして俺が完膚なきまでにめろめろになった(「これが萌えるということか!」とか思ったよ)作品こそ、『夏季限定トロピカルパフェ事件』であった。策士で食いしん坊で、悪魔と子悪…

平山譲『魂の箱』

読書メーター見ても、文庫本は俺しか読了登録してないので、こっちでも感想をあげてみる。こういう本は読まれるべきだ。すくなくともボクシングファンくらいには。 本書は、元世界ジュニア・フェザー級チャンピオン畑中清詞、それから引退後彼が立ち上げた畑…

米澤穂信『ボトルネック』

兄が死んだと聞いたとき、ぼくは恋したひとを弔っていた。 と、将来「名作の書き出し百選」に収録されそうな一文(よくこんなの思いつくよな)から始まる物語は、文庫版のあらすじ紹介によるとこんな感じ。 亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていた…

梓崎優 叫びと祈り

「砂漠を走る船の道(感想)」の著者が同作を含む連作短篇でとうとう本を出した。待っていたよひゅーひゅー、と本屋へ走り、あっちにいってもこっちにいっても見当たらず、思いあまって店員に聞いてみたところ、どこからともなく出してきてもらえた。ありが…

伊藤計劃 虐殺器官

第一回PLAYBOYミステリー大賞国内編第一位の作品。 ポスト9・11の罪と罰を描く衝撃のデビュー長篇 と帯には書かれている。友人が、何はさておきこれだと勧めてくれたことがあって、そのあとすぐ買ったのだが、ずっと読まずに放っておいた。のだが…

滝田務雄『田舎の刑事の趣味とお仕事』

はじめてオリジナリティという言葉を、具体的に「こういうものだ」と定義してくれたのは、駿台で現代文を教えてくれた霜栄という先生だった。もちろんそれまでにだって、オリジナリティだの個性だのって言葉は散々聞かされていたわけだけれども、そういう言…

北杜夫 怪盗ジバコ

初北杜夫。怪盗ジゴマ*1のパロディか? と大いなる勘違いをして読み始める。すぐにわかったことであるが、ジバコはジゴマとは全然関係なく、たまたまその当時ノーベル文学賞を受賞したソ連の作家ボリス・パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」のもじりだった…

伊藤正己 憲法入門第四版補訂版

いきなり追記:追記場所をどこにするか考えた結果、先頭にしてみた。この記事には次のようなご指摘が入っている。 http://h.hatena.ne.jp/seijigakuto/9234087845162037893 1. >>さらに言うと、公共の福祉の前では個人の自由は制限されるべきという考えに…

二人権兵衛

狐狩りをこととする権兵衛は狐を捕る罠をゴンベに壊される。首を切ると脅すが盂蘭盆まであずけることにする。狙いは担保の米一俵。天保年間飢饉の頃であれば、首のひとつよりも米の方をもらいたい。 ところがこのあと、展開は狐の恩返しに。なんてことはない…

霊薬十二神丹

上杉家家臣の平田助次郎は十五の頃、喧嘩で男根を切り落とされるが、弟伊織が用意した十二神丹という霊薬の力で切り落とされた男根はもとの場所に無事貼り付き、以来何十年も容姿は若者のまま主君の寵愛を受け、戦場での活躍もめざましい生涯を送る。と、筋…

山岸俊男『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』

あっちこっちで取りあげられていた本。「日本人よりアメリカ人の方が他人を信頼する」「日本人はアメリカ人より個人主義」って部分の紹介をよく見た気がしたのだが、ブクマし忘れたせいで記事に辿り着けなかった。 本書は1999年に発行されたもの。内容紹介は…

友達と飲んできた行き帰りの電車の中で読む。昭和28(1953)年3月初出。元タバコの専売公社勤めの国助は「たばこは万人が好むものなのだから、たばこの学問はその応用の面において万人の幸福のためにもっとも上等のたばこをつくり出すことにことにある」とい…

おとしばなし和唐内

和唐内というのは近松門左衛門の浄瑠璃「国姓爺合戦」の主人公。これを使って一幕喜劇みたいな体裁で書かれた作品。初出は昭和25(1950)年日本人と中国人のハーフである和唐内は作品の冒頭、日本で部下とともに退屈をもてあまし、金もない。そこで見せ物小…

殺人の多い料理店

賢治の童話が死を招く… 生誕百周年の宮沢賢治ゆかりの地盛岡で、作品の朗読会が開かれた。その出席者が、なぜか相次いで殺されてゆく―― 帯表 ブックオフで見掛けて購入。なんの気なしに読み出して驚いた。何に驚いたって文体に驚いた。たとえば一章の書き出…

万城目学 鴨川ホルモー

上手いなあ、構成もキャラ立ても、文章も。本屋で「プリンセス・トヨトミ」の帯見たら面白そうだったから、とりあえずどんな作者なのか文庫を読んでみようで読んでみた本作は、2006年の第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞したものだとか。映画にもなっ…

横光利一 機械・春は馬車に乗って

自分は時折、無性に筋肉少女帯を聴きたくなるときがある。別に全部諳んじているというほど好きなわけではないけれども、進研ゼミのCMソングだった「蜘蛛の糸*1」とか、「小さな恋のメロディ」とか「サンフランシスコ」とか「タチムカウ」とかが好きだ。「…

佐々木丸美 崖の館

我慢はするものだ、という希有な教訓のあった作品。帯に「伝説の作家が贈る〈館〉三部作」とあるのに興味をひかれて読んでみた。伝説の作家で館で三部作。読んでみたいじゃないか。ところが、ところが、これが非常になんともはや。 おっと一応あらすじを紹介…

DMがいっぱい

ケータイ小説で問題編を読み、NHKで回答編を見た。不動産会社の社長が口にタオルを突っ込んで、カーテンの紐のようなもので絞殺された。床には特注のでかい首都圏の地図があり、社長はその上で死んでいる。そして手や足が指す先には地名が。これがダイイ…